中空ちゅうくう)” の例文
中空ちゅうくうには大なるかさいただきしきいろき月を仰ぎ、低く地平線に接しては煙の如き横雲を漂はしたる田圃たんぼを越え、彼方かなた遥かにくるわの屋根を望む処。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
子宮しきゅう茄子なすの形をした中空ちゅうくううつわである。そう考えると、子宮にもその寸法に応じた或る振動数がある筈だ。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中空ちゅうくうの三日月、両側の家々、家々の窓の薔薇ばらの花を映した一すじの水路の水の光り、——それは皆前に見た通りである。が、あの愛くるしい少女だけはどうしたのか今度は顔を出さない。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
壮観そうかんとは、このことであろう。中空ちゅうくうにかかる雪の爆布は、だんだんと近づいてきた。こっちからは、車体はすこしも見えない。見えるのは、ただ雪と煙りとだけであった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)