不快いや)” の例文
そんなものは見たくないやうな氣がして——子供だからそれほど分明はつきり不快いやだとは思はなかつたかもしれないが、まあそんな覺えがあります。
鏡二題 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
あのお馴染の不快いやな気持——こういったものが、どうやらぼんやり記憶に残っている、彼の幼年時代の惨めな思い出であった。
それを聞くとみのるは義男の小さな世間への虚榮をはつきりと見せられた樣になつて不快いやな氣がした。何故この男は斯う信實がないのだらうと思つた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
言い終ると、身の毛もすくむような不快いやな声でわらい出した。じっと堪えながら、私は谷中尉のことを思っていた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「麦酒も松茸もございますから早くあれを還してお了ひなさいましよ。わたし那奴あいつが居ると思ふと不快いやな心持で」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
顏色は變に蒼白あをじろかつた。しかしその他では彼は容貌の美しい人であつた。特に初めて見た時さうである。よく/\見ると彼の顏には何か人に不快いやだと思はすものがあつた。
何方かと云えば不快いやな動物、獰猛な動物であった、時々は唸ったり咽喉を鳴らしたりする、また時には話しもする、倫敦ロンドンに住んでいて、街も歩くが、見世物にはされていない
其後二度許り竹山を訪ねて來たが、一度はモウ節季近い凩の吹き荒れて、灰色の雲が低く軒を掠めて飛ぶ不快いやな日で、野村は「患者が一人も來ない。」と云つて悄氣しよげ返つて居た。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あとからいて行くのは乞食てい不快いや臭気においのする老爺じい
搗てて加へて、どの家の門口かどぐちからもおつそろしく不快いやな惡臭が流れて來るので、おれは鼻を押へて大急ぎに駈け拔けた。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
前の場合には眼は殘酷な秋官しうくわんです、なさけ用捨もなく毛筋ほどのおもねりもありません、氣孔けあなひとつにも泣きたいほどの厭さがあつて、とてもたまらない不快いやな存在です。
鏡二題 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
彼は何かちょっとでも不快いやな臭いがすると、すぐに腹を立てるのであった。
「西島屋のならびをずっとくれるといったのだが、おら不快いやだからな。」
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
女性としての最も不快いやなところがないから好いのだ。