下情かじょう)” の例文
妙庵先生、下情かじょうに通じているばかりでなく、一通りは古典にも通じ、またオランダ渡りの鑑識にも通じております。話をきいて打ち笑い
されば今日の男女に喜ばるべき通俗小説をものせんとせば、筆をるに先んじてまづ今日の下情かじょうに通暁せざるべからざるなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「いいお坊っちゃんさな。警部さんならちと下情かじょうには通じて置くものですぜ、風教視察という奴でね。」とタゴールさん。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
斉護は子をして下情かじょうに通ぜしめんことを欲し、特に微行を命じたので、寛五郎と従者とは始終質素を旨としていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ただ余りに女性的で権臣を取って抑えることが出来ず、権臣のいうままになっていたらしい。少しも下情かじょうに通じなかった。権臣がそれをさえぎるからであった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奥さんは何も知らず、銑太郎なお欺くべしじゃが、あの、お松というのが、また悪く下情かじょうに通じておって、ごうなや川蝦かわえびで、あじやおぼこの釣れないことは心得ておるから。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さらに主上におかせられては、庶民訴訟出来の時、下情かじょうかみに達せざるあらば、公平裁断を欠くものあらんと、記録所を置かれて出御しゅつぎょましまし、直きに訴えを聞こしめす。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「当路の大官どもは下情かじょうに通ぜぬ」