下山げざん)” の例文
下山げざんの途中は比較的に楽でした。来た時とは全く別の方向を取って、水の多い谷底の方へしばらく降って行きますと、さらに草や木の多い普通の山路に出ました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
下山げざんとき面影おもかげは、富士川ふじがはきよに、白蓮華びやくれんげはなびらにもられよとて、せつ本腹ほんぷくいのつたのである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここも、小幡民部こばたみんぶ蔦之助つたのすけ小文治こぶんじの三人が、ひそかに、間道かんどうからかげをかくして、三方みかたはらへ立っていったのちに、ぜったいに部下をのぞかせずに、三人の下山げざん秘密ひみつにしていたところ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここで降り出されては困ると思って、三人はすこし足を早めて下山げざんの路にさしかかると、何を見たかお袖は俄かに立ちどまった。彼女は無言で母の袖をひくと、お琴も立ちどまった。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もちろんそれは久子が卯木に頼んで書かせた物と正成には分っていたし、あらわに、早く帰って下さいなどと言っていないだけに、よけい不愍ふびんもまして、すぐ下山げざんする気になったものだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、下山げざんの道へ走りだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄門公こうもんこう下山げざん
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)