上甲板じょうかんぱん)” の例文
と、清さんは、急に真顔になって、「坂本さん。ちょッと話があるんだ。来てくれませんか」と先に立ち、上甲板じょうかんぱんに登って行きます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
小林少年と賢吉少年は、上甲板じょうかんぱんに出て、船尾にあわだつ白い波を見ながら、かたをくんで、たからかに歌をうたいました。
海底の魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
事務長のクーパーは機関長をはげましておいて、電話を、本船の上甲板じょうかんぱんのもう一段上にある操縦室につなぎかえた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
燁代さんが、美しい眉をひそめた時、潜水艦は上甲板じょうかんぱんの、巨砲を積んだ大砲塔のもの凄い形をまる出しにして、もうすっかり浮き上って来たのである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
そこを二三度も石炭籠すみかごを担いで往復してから急に上甲板じょうかんぱんめたい空気に触れると、眼がクラクラして、足がよろめいて、鬼のような荒くれ男が他愛なくブッおれるんだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
終夜が波の響と風の音と、それに雑多の——それは帆檣ほばしらに降る、船室の屋根の上甲板じょうかんぱんに降る、吊ボートに降る、下の甲板に降る、通風筒に吹きつける、欄干てすりに降る、——雨の音であった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
船長は、上甲板じょうかんぱんで叩き暴れる海を睨んだまま動かなかった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
大胆にもくじらの背のような上甲板じょうかんぱんを海上に現わしながら勇しく進撃してゆくのであった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その仕事に行き詰まると、今のピストルを二挺持って上甲板じょうかんぱんけ上る。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)