万顆ばんか)” の例文
「あれだ」と宗近君がゆびさうしろを見ると、白いあわが一町ばかり、か落しにみ合って、谷をかすかな日影を万顆ばんかたま我勝われがちに奪い合っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
紫に明け渡る夜を待ちかねて、ぬっと出る旭日あさひが、おかより岡をて、万顆ばんか黄玉こうぎょくは一時に耀かがやく紀の国から、ぬすみ来たかおりと思われる。この下を通るものは酔わねば出る事を許されぬおきてである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)