万華まんげ)” の例文
高時は、堂上などに、眷恋けんれんはせぬ。京にも負けぬ、鎌倉の京をここに築いて見しょう。あらゆる工芸のすいをあつめ、万華まんげ鎌倉の楽園を
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耳を澄ますと、四山の樹々には、さまざまな小禽ことりむれ万華まんげの春に歌っている。空は深碧しんぺきぬぐわれて、虹色の陽がとろけそうにかがやいていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義清は、扈従こじゅうして、きのうきょう、ここの万華まんげのにぎわいを見るにつけ、待賢門院の、今は訪う人まれな冬庭の——わびしい女房たちを、思い出さずにいられなかった。
「この中で、法然房ほうねんぼうのことばを真に汲みとって、即座に、仏陀みだの恩寵を感じ、この世をば、この肉眼で、万華まんげの浄土と眺め得られるものは、おそらく、綽空とその妻とが、第一であろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その歓涙にまぶたは霞んで、御霊廟みたまやがんは、虹のような光をぽっとにじませ、あたりには、馥郁ふくいくと、蓮華れんげが舞う心地がし、その寂光万華まんげかがやきの裡に、微笑したもう太子三尊のおん姿が見え
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間は誰でも、こうして、万華まんげ浄土じょうどに生を楽しんでいられるものを、好んで泣き、好んで悩み、愛慾と修羅しゅら坩堝るつぼへ、われからちて行って、八寒十熱の炎に身をかなければ気がすまない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さながらここはのり万華まんげの咲きみだれた浄土曼陀羅じょうどまんだらであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)