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万樹
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ばんじゅ
それを正面のたかき
石段にあおいで、ひろい
平地の
周囲も、またそれからながめおろされる
渓谷も、四
顧の山も
沢も
万樹鮮紅に
染められて、
晩秋の
大気はすみきッている。
此辺は秋已に深く、
万樹霜を
閲し、狐色になった
樹々の間に、イタヤ
楓は火の如く、北海道の銀杏なる桂は黄の
焔を上げて居る。旭川から五時間余走って、汽車は
狩勝駅に来た。
石狩十勝の
境である。
ことに
厳粛きわまる
武神武人の
大行事、おのずから人の
襟をたださしめて、一しゅんののちは、まるで
山雨一
過して
万樹のいろの
改まったように、シーンと鳴りしずまったまま