一颯いっさつ)” の例文
元祐はおどろいて座を立って室外へ顔を出した。見れば、夫人は隣室からたずさえて出た薙刀なぎなた一颯いっさつの下に、竹井惣左衛門を手討ちにしていたのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俄然がぜん、士卒はさわぎ始めた。こう来ればこう出る当然な歩みをして来ながら、われにもあらぬ眼をみはって、一颯いっさつ、冷風に吹かれるや否、惣勢そうぜい足なみをすくみ止めた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貝を用うべきところであるが、貝の音も松明たいまついましめてあるものらしく、浅野弥兵衛が、秀吉から金采きんさいを受けて、秀吉に代ってそれを一颯いっさつ、二颯、三颯——打ち振った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一颯いっさつの光は戛然かつぜんと鳴った。宗治は、自分に先立つ道づれを、涙とつるぎの下に見た。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又四郎は、炉のそばへ進んで行って、一颯いっさついきなり、自在竹の上部を斬り落した。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一颯いっさつの陣刀とともに、彼へぶつかろうとした三河守は、思わず足をすくめた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西山の梅をって、杖としたのを突いている。けれど、杖を頼るようなお腰ではない。むしろ、途上に不測の事でもあれば、その杖は不逞の者の頭上へ、たちまち一颯いっさつうなりそうな含みを持っていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣を抜いて、ちょうっと一颯いっさつ、梨の幹へ、一伐いちばつを加えた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、空を一颯いっさつした。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)