一色いっしき)” の例文
一色いっしきの海岸にうち寄せる夕浪がやや耳に音高く響いて来て、潮煙のうちに、鎌倉の海岸線から江の島がまゆずみのように霞んでいる。
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おそらく、不知哉丸いさやまると藤夜叉の母子は、あの日を、都見物のさいごとして、近く三河の一色いっしきへ帰るつもりでいたのであろう。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうまの刻ばかりに、中御門猪熊の一色いっしき殿のお館に、乱妨人が火をかけたのでございます。それのみではございません。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
一二の出版書肆しょしへまわされた果てに、庸三のところへ出入りしている、若い劇作家であり、出版屋であった一色いっしきによって本になったのも、ちょうどそのころであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そのそばにきれいな風車かざぐるまいつけた。車がしきりに回る。車の羽弁はね五色ごしきに塗ってある。それが一色いっしきになって回る。白い棺はきれいな風車を絶え間なく動かして、三四郎の横を通り越した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
味方の全軍が、わずか一城に懸って、日を過すうちに、神戸かんべ一色いっしきの敵軍が、退路を断って、包囲して来たら何と召さるか
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうまの刻ばかりに、中御門猪熊の一色いっしき殿のお館に、乱妨人が火をかけたのでございます。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
しかし、創造せず、働かぬ人にとっては、ただ一色いっしきの「空」の世界であります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
全く世界一色いっしきの内につつまれてしまうに違ないと云う事を、それとはなく意識して、一二時間後に起る全体の色を、一二時間前に、入日いりひかたの局部の色として認めたから、局部から全体をそそのかされて
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そう言われて、庸三はたちまちあの青年一色いっしきのことが思い出された。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ひょっとしたら、一色いっしきさんが知ってやしないかな。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「三河の一色いっしき
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)