一匙ひとさじ)” の例文
いつものように砂糖を分配してくれるものがないので、大きい方がやがて壺の中から一匙ひとさじの砂糖をすくい出して自分の皿の上へあけた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人の中川またしても自慢顔「諸君、今度こそ誰もまだ試みた事のない珍料理で僕の新発明だ。玄米のマッシ、即ち玄米のお粥というようなものだ」小山が先ず一匙ひとさじ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
夜中にでも、ちよつとせきが聞えると、どんなに眠くつても、すぐに飛び起きて、シロップを一匙ひとさじ飲ませる……。あの人は、「アリガタウ」つて、そのたんびに、お礼を云ふの。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
一匙ひとさじのココアのにほひなつかしくおとなふ身とは知らしたまはじ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
千代子がかゆ一匙ひとさじずつすくって口へ入れてやるたびに、宵子はおいしい旨しいだの、ちょうだいちょうだいだのいろいろな芸をいられた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
看護婦は五十グラムのかゆをコップの中に入れて、それを鯛味噌たいみそと混ぜ合わして、一匙ひとさじずつ自分の口に運んでくれた。余はすずめの子かからすの子のような心持がした。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)