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ひきすえ
緩して
砂利の上に
引居られし
體此世の人とは見えざりけり
白洲の正面には大岡越前守殿
着座有左の方には御目附
土屋六郎兵衞殿
縁側には
目安方の
與力下には同心に至る迄
威儀嚴重に
控へたり此時大岡殿は武州幸手宿富右衞門と
呼れ其方歳は
何歳成ぞと
尋問しかば富右衞門ハツと平伏し少し顏を
「あア/\
斯うも警察のお手が
能く行届き、
何うしても逃れぬ事が出来ぬと
知たら、決して悪事は働かぬ所だッたのに」とは
或罪人が
己れの悪事露見して判事の前に
引据られし時の
懺悔の言葉なりとかや