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はうそう
されば此地にては
疱瘡する
者甚だ
稀也、十年に一人あるかなしか也と
語り。さて清水川原の村にいたりしに家二軒あり。
案内がかたはらよりあみ
衣とは
婆々どのゝ
着たるあれ也といふ、それを見れば
㠿布のやうなるを
袖なし
羽織のやうにしたる物也。
茶を
乞ひければ老女
果してまづ
疱瘡の事を
問ふ。
案内
曰、秋山の人は
疱瘡をおそるゝ事
死をおそるゝが
如し。いかんとなれば、もしはうそうするものあれば
我子といへども家に
居らせず、山に
仮小屋を作りて入れおき、
喰物をはこびやしなふのみ。