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しりはしおり
身には
法衣に似て法衣でないようなものを着ていた。それに、
尻端折、
脚絆、
草鞋穿という異様な姿をしていた。頭は坊主に
剃っていた。その時の心の経験の記憶が
復た実際に岸本の身に
還って来た。
よほど遠くから出て来るものと見え、いつでも
鞋に
脚半掛け
尻端折という
出立で、帰りの夜道の用心と思われる
弓張提灯を腰低く前で結んだ
真田の三尺帯の
尻ッぺたに差していた。
つづいて
尻端折の
股引にゴム靴をはいた
請負師らしい男の通った
後、
暫くしてから、
蝙蝠傘と小包を提げた貧し
気な女房が
日和下駄で色気もなく砂を
蹴立てて
大股に歩いて行った。