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ししやうさま
踏分々々彼お三婆の
方へ
到りぬ今日は
怪からぬ大雪にて
戸口へも出られずさぞ寒からんと存じ
師匠樣より
貰ひし酒を
寒凌ぎにもと少しなれど
持來りしとて
件の
徳利と
竹皮包を
押拭ひ成程お身の云ふ通り早く兩親に
別れ
師匠樣の
養育にて人と
成ば不仕合の樣なれ共併しさう
達者で成長せしは何よりの仕合なり
譯と
云ば此婆が娘の
産し御子樣當年まで
御存命ならば
恰どお身と同じ
齡にて寶永三
戌年然も三月十五日子の刻の御出生なりしと
語り又も
泪に暮る
體は
合點のゆかぬ
惇言と思へば扨は