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きつねいろ
斯うなると
昨夜の
暖な「スープ」や、
狐色の「フライ」や、
蒸氣のホカ/\と
立つて
居る「チツキンロース」などが、
食道の
邊にむかついて
來る。
おつぎは
手桶の
底の
凍つた
握飯を
燒趾の
炭に
火を
起して
狐色に
燒いてそれを二つ三つ
前垂にくるんで
行つて
見た。おつぎはこつそりと
覗くやうにして
見た。
窓向うの壁がかぶりつきたいほどうまそうな
狐色に見えた。彼女は笑った。
横隔膜を両手で
押えて笑った。腹が減り過ぎて
却っておかしくなる時が誰にでもあるものだ。