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おぼれしゝ
人は
辺りにありてかれ
将に死せんとする時かならず
屁をひるを
避る。狐尾を
揺さゞるを見て
溺死たるを
知り、尾を
採り大根を
抜がごとくして狐を
得る。
事のよしをつげてお菊が
戒名をもとめ、お菊が
溺死たる
橋の
傍に髪の毛を
埋め
石塔を
建る事すべて人を
葬るが
如くし、みなあつまりてねんごろに
仏事を
営みしに
夫も
子も
冥途にさきだて
独り
跡にのこり、かそけき
烟りさへ立かねたれば、これよりちかき
五十嵐村に
由縁の
者あるゆゑ
助けを
乞んとてこの橋をわたりかゝり、あやまちて水に入り
溺死たるもの也