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いまどばし
待乳山を背にして
今戸橋のたもと、竹屋の渡しを、
山谷堀をへだてたとなりにして、
墨堤の
言問を、
三囲神社の鳥居の頭を、向岸に見わたす広い
一構が、評判の
旗亭有明楼であった。
みいちゃんは
津藤に縁故があるとかいう
河野某を
檀那に取っていたが、河野は遂にみいちゃんを
娶って、優善が東京に著いた時には、
今戸橋の
畔に芸者屋を出していた。屋号は同じ湊屋である。
長吉は
病後の
夕風を
恐れてます/\
歩みを早めたが、
然し
山谷堀から
今戸橋の
向に開ける
隅田川の
景色を見ると、どうしても
暫く
立止らずにはゐられなくなつた。