親父おやぢ)” の例文
盲目の親父おやぢは青い顏をして小さくなつて爐端に坐つてゐる……酒さへ飮まなけりやあ意氣地がね程、まあ確に意氣地がなかつたんだが
酔ひたる商人 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
西尾にしをからひがしして小僧こぞう皆身みなみため年季奉公ねんきぼうこうと、東西南北とうざいなんぼくで書いてると、おまへ親父おやぢがそれをくにへ持つてつて表装へうさうを加へ
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
阿母おふくろなんかどうだつていいさ。おれにとつてはお前が阿母おふくろでもあれば、親父おやぢでもあり、この世の中にある限りの大事なものだもの。
其處そこその翌日あくるひ愈〻いよ/\怠惰屋なまけや弟子入でしいりと、親父おやぢ息子むすこ衣裝みなりこしらへあたま奇麗きれいかつてやつて、ラクダルの莊園しやうゑんへとかけてつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
然し大抵ならの校長は此方こツちのいふ通りに都合してくれますよ。謂ツちや變だけれど、僕の親父おやぢとは金錢上の關係もあるもんですからね。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
やつ身體からだいたくせ親父おやぢらすまいとしてはたらいてた、れをたられはくちけなかつた、をとこくてへのは可笑をかしいではいか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
然るに其かねは野々宮さんが、いもとにヷイオリンをつてらなくてはならないとかで、わざ/\国もと親父おやぢさんからおくらせたものださうだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
施主せしゆ、へい、施主せしゆまをしますと……」となにかまぶしさうなほそうして、うす眉毛まゆげ俯向うつむけた、やつれ親父おやぢ手拭てぬぐひひたひく。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
数多い世間の親父おやぢよ、牛のやうに愚かな頭を持つた世間の親父おやぢよ、おみ達がどんな説明をしようと、多くの子供はそれに満足するものではない。
僕の隣の部屋へ一月前から移つて来たピエルと云ふ青年は地方官の息子だが、女の為に巴里パリイの大学を中途でして親父おやぢ仕送しおくりで遊んで居る男だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
何日いつとて云うて來ぬかモウ今日あたりは來然きさうな物と親父おやぢいへ女兒むすめもまた戀しい人と二世のえんむすぶに附てうれしさの一日ひとひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
永富町ながとみちやうと申候處の銅物屋かなものや大釜おほがまの中にて、七人やけ死申候、(原註、親父おやぢ一人、息子むすこ一人、十五歳に成候見せの者一人、丁穉でつち三人、抱へのとびの者一人)
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
親父おやぢだのお袋だのの稽古してゐるのを聞き覚えたのである。その文句もんくなんでも観世音菩薩くわんぜおんぼさつの「庭にとしゑんじゆこずゑ」に現れるとかなんとか云ふのだつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の親父おやぢは水雷専門の兵曹長へいさうちやうで水雷のことなら、僕も小さい時から、見たり、聞いたりして、よく知つてゐるんだ。
怪艦ウルフ号 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「浮氣つぽくはないけれど、そりや可愛らしい娘ですよ、尤も親父おやぢの由五郎は、あつしの友達の友達の又友達で」
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「おれがお前の親父おやぢだ、祖父ぢいだ、家を出た日には、まだ若かつた、今日は年寄つたリツプ、フアン、ヰンクルだ。まあ此多人数のなかに、誰もおれを見覚えた人はないか、」
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
おせいの親父おやぢ義兄にいさんが見えて、おせいを引張つて帰つて行つたのは、たしか五月の三十日だと思ふ。その時も、大変なんでしたよ。僕にはもと/\掠奪りやくだつの心はないんだ。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
今日も御留守に米屋の親父おやぢが来てたまつた米代の催促をするやら、それに炭屋や質屋の……
名工出世譚 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
中野宮園町の国民酒場までけつけて、籤にはづれて秋風身にしむ夕暮の焼跡の町を歩いて帰つたこともある……長男のやつ、籤運の弱い親父おやぢに一杯のませてやりたいと思つたらしく
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
ひとりでそれを心配して、孫や孫やとしきりに重右衛門ばかりを力にして、何うか貴様は、親父おやぢのやうに意気地なしには為つて呉れるな、祖父ぢいさんの代の田地でんちを何うか元のやうに恢復くわいふくして呉れと
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
アジブは親父おやぢと一緒に肉屋をやつてゐる。ぶく/\に太つて汚いが、金が出来たな。それで、落ちぶれた友達とは口もきかない。——ブウバケルは結婚してゐた。まだ十五なのに可笑をかしな事だ。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
この子供の親父おやぢは今此地ここにゐねえんです、東京さ稼ぎに行つてるんで、妹はこの子供を連れて、ひと月ばかり前に私を頼つて來たんです。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
彼方あつち此方こつちさがす中、やつとのことで大きな無花果いちじく樹蔭こかげこんでるのをつけし、親父おやぢ恭々うや/\しく近寄ちかよつて丁寧ていねいにお辭儀じぎをしてふのには
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「お福さへ居なきや、俺は勝手だ。親父おやぢ遺言状ゆゐごんじやうが出ても、三千兩の身上しんしやうを受取るだけで、何の怖いこともない」
とりわけ貧乏人の子供は、親父おやぢの言ひ得ない事を言ふものである。彼等は知事の子供を見ると言つたものだ。
ひよつくりへんてこなゆめなんかをてね、平常ふだんやさしいこと一言ひとことつてれるひと母親おふくろ親父おやぢあねさんやあにさんのやうにおもはれて、もうすこきてやうかしら
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これは前の銃を折つてからキクッタの親父おやぢが熊の皮十枚を出して和人シヤモから買ひ取つたもので、最新式の軍用銃だといふことでしたから、キクッタは、今度こそは
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
それに今朝親父おやぢさう言つてましたから、先刻話した校長の所へ、これから𢌞つて見ようかと思ふんです。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
親父おやぢにも、せがれにも、風景にも、ぼくにしてを破らざること、もろこしのもちの如き味はひありと言ふべし。その手際てぎはあざやかなるは恐らくは九月小説中の第一ならん
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ひどくるな、ひさしいあとに親父おやぢ身延山みのぶさん参詣さんけいつた時にやつぱり雪のめに難渋なんじふして木の下であかしたとのことだがお祖師様そしさまばちでもあたつてゐるのかしら
それに親父おやぢが金属の彫刻師ほりしだものですから、さかづき、香炉、目貫縁頭めぬきふちがしらなどはありませんが、其仕事をさせる積りだつたので、絵を習へと云ふので少しばかりネ、すゝきらん
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なに親父おやぢだいから贔屓ひいきにしてつてるものですから、時々とき/″\なんだつてつてるんです。ところかないくせに、たゞよくばりたがつてね、まことに取扱とりあつかにく代物しろものです。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しますね、西洋人の親子はさうして肉体が触れるのですね、僕等は日本へ帰つたらゆきなり親父おやぢにぶんなぐられるんです、さうしてそれが親子の肉体が触れる時なんです。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
急ぐ程にやが宿場しゆくば共思はるゝ所へ出し頃は夜は白々ほの/″\明放あけはなれ往來の旅人も多く有ければ兩人は漸々やう/\心落付初めて勞れを覺えづ此邊にて一息ひといきつかんと茶見世に立寄て腰を掛ければ茶店の親父おやぢは茶を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
親父おやぢさんが何でも陸軍の中將だか少將だので、その男爵を貰つたんですな、たしか從五位だか、いや正六位だつたかな……』
酔ひたる商人 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
さくらかはむかされては大變たいへんと、兒童こども早速さつそく親父おやぢとほりになつてその翌日よくじつから平常いつもごと學校がくかうふううちた。けれどもけつして學校がくかうにはかない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「行くよ、行くには行くがな、——親父おやぢが娘の嫁入先へ、ウロウロ行くのは、あまり見つともいいものぢやねえ」
親父おやぢさん躍起になつて運動した結果、やつと許されて割合に仕事の楽な兵站部に働く事になつたが、不思議にも朝夕顔を合はせる上長官は、自分の子息むすこであつた。
おゝ/\……お美那みな可愛想かあいさうぢやアないか……見なよ……人品ひとがら可愛かあいらしい子供こぞうだが、生来はらからの乞食こじきでもあるまいがの……あれまア親父おやぢ負傷けがをしたといふので
あれはまた、あれなりに露悪家だから面白い。昔しは殿様と親父おやぢ丈が露悪家で済んでゐたが、今日こんにちでは各自めい/\同等の権利で露悪家になりたがる。尤もわるい事でも何でもない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あゝ此樣こん浮氣者うわきものにはれがしたと思召おぼしめす、三だいつたはつての出來できそこね、親父おやぢが一せうもかなしいことでござんしたとてほろりとするに、その親父おやぢさむはとひかけられて、親父おやぢ職人しよくにん
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
子良はもう立派な漁夫れふしの少年です。親父おやぢ伯良はくりやうたすけて漁に出ます。けれども母のことばかり考へてゐました。子良の幼ない記憶に残る母は鼻の高い、色の真白まつしろな、せいの高い美しい人でした。
子良の昇天 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
云一萬兩程つかこみ親父おやぢから勘當かんだうを請たりと話すを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
親父おやぢはおれを蓆の上で、虱と一緒に育てはしたが、全くやくざな親父ではあつたが、親は親だ、なえ、親は親だと、おれはさう思つて孝行をして來た。
酔ひたる商人 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
なかには弟子だちが焼いて呉れたこうしの肉が一杯詰つてゐるしするので、基督はこれ迄にない上機嫌で、親父おやぢの神様に代つて、姦通まをとこのほかは大抵の罪はかけ構ひなく
するとよめあね番頭ばんとうとでいぢめたので、よめつらくてられないから、実家さとかへると、親父おやぢ昔気質むかしかたぎ武士ぶしだから、なか/\かない、られてるやうな者は手打てうちにしてしまふ
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ああこんな浮気者にはれがしたと思召おぼしめす、三代伝はつての出来そこね、親父おやぢが一生もかなしい事でござんしたとてほろりとするに、その親父さむはと問ひかけられて、親父は職人
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「金銀などを扱ふから、人には見せたくないといつてをりました。あの晩も多分そんな片付けをしてゐたのでせう——親父おやぢは夜分でもちよい/\一人で土藏へ行つて仕事をしました」
それでも一年許いちねんばかりあひだは、もう一返親父おやぢけて、東京へると云つて、うるさい程手紙をこしたが、此頃は漸く断念したとえて、大した不平がましい訴もしない様になつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「やア、親父おやぢ(熊のこと)がゐるぞ!」
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)