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「船中」と「同窓」は中途で厭になつてめたのを後に加筆稿了し「楡の樹蔭」はその頃の日記の中から拾ひ集めた彼地の夏の小景を
かつら (やがて砧の手をやめる)一晌いっときあまりも擣ちつづけたので、肩も腕もしびるるような。もうよいほどにしてみょうでないか。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ねえお母様、お京さんはやっぱり大森がいやだって、もう二日したら帰るんだって云ってよこしたんです、雨がまなくちゃあ困る。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そうヨ、去年は皇太子殿下がおいでになるというてここも道後も騒いだのじゃけれど、またそれがみになったということで、皆精を
初夢 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
痛い所へさわられた様な気がしたんだね——君の話を中途でめさせてしまったが、今、おれは、その同じ疑いに悩まされているのだ。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
盛夏三伏さんぷくの頃ともなれば、影沈む緑のこずえに、月のなみ越すばかりなり。冬至の第一日に至りて、はたとむ、あたかもげんを断つごとし。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
哲郎は起って女と並んだ時、爪立つまだちをめた女の体がもったりともたれて来た。哲郎はその女の体を支えながらボール箱に手をやった。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もうこのころじゃ、門附けは流行はやらんでな。ことしあもうめよかと思うだ。五、六年前まであ、東京へ行った連中も旅費のほかに小金を
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
これをよい時機として役者をめようとしたのであったならば、貞奴の光彩のなくなったのももっともだと、うなずかなければならないのは
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
相接する機会が多く、じっさい、何だかんだとしじゅう一しょに噂の種をいて世間の脚下灯きゃっかとうに立っているんだから、むを得ない。
「もうええ、ええ。その話めといて。———私が悪かったよってに、これからきっとそないするわ。顔が壊れてしまうやないか」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なんとなく心配しんぱいさうなかほで、左樣々々さやう/\々々/\、と、打濕うちしめつてつてるかとおもふと、やれヴオツカをせの、麥酒ビールめろのとすゝめはじめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
時勢の推移をいま少し静観してもおそくはない——彼らはそう主張してまなかったのだ。おそかったか早かったか。それは判らぬ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
一人を罰するに依って万人の平和を保つ事が出来るなれば、その一人は死刑に処しても万人の平和を保たんためにはむを得ない。
余が平和主義の立脚点 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
満員電車をめて二三台あとのいた車にりたいと思う心じゃ。わかるかな。それが人間を、地球以外の遊星へ植民を計画させる
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これをおきになった、おうさまは、ふかうれいにしずまれました。いつしかかがりえて、管弦かんげんんでしまったのでございます。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勝氏は真実しんじつの攘夷論者に非ざるべしといえども、当時とうじいきおいむを得ずして攘夷論をよそおいたるものならん。その事情じじょうもって知るべし。
……私の書斎に、遠くの村祭の、陽気な太鼓の音がきこえてきましたが、昨日からばつたりと、その音が鳴りんでしまひました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
「秀さん、私ももウ今夜ぎりで帰るのですから、仲よく遊びましょう。ね。さア。もウ泣くものではありません、さア泣きんで」
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
よるのこたァ、こっちがてるうちだから、なにをしてもかまわねえが、お天道様てんとうさまが、あがったら、そのにおいだけにめてもらいてえッてよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ぼくはこんなことを、日本選手でもあり、立派な紳士しんし淑女しゅくじょでもあるみなさんに、お話するのは、じつに残念であるが、むを得ん。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
啓之助の気持も妙にすさんできて、食いちがっている二人の心と心とが、行く所まで、いがみあわなければまないのが常であった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは意志いしぢゃ、おもんじておくりゃらば、顏色がんしょくうるはしうし、そのむづかしいかほめておくりゃれ。祝宴最中いはひもなか不似合ふにあひぢゃわい。
「君それは違ふ、ひどい違ひだよ。僕が禁めたといふのは、新聞の発行をぢやないんだ。唯購読をめたといふに過ぎないんだ。」
現世げんせ夫婦ふうふならあいよくとの二筋ふたすじむすばれるのもむをぬが、一たん肉体にくたいはなれたうえは、すっかりよくからははなれてしまわねばならぬ。
従来の行懸いきがかりに迫られ、岩瀬肥後守、松平伊賀守の苦請に応じ、満腔徳川氏の威信を重んずるよりして、むを得ずここに至りしなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そしてあの、おいらをつかまえたときの、騒がずあわてぬとりなし、役者をめさせて、泥棒にしても押しも押されもされぬ人間だ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
雑草のはびこるに任せた庭のように、あまりにかまわずにあるところから来ていると考えたからで——むを得ない家庭の事情から言っても
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「一度に餘り澤山はいけないよ——おめ。」彼女の兄は云つた、「それ位で澤山だ。」そして彼はミルクとコップとを引込めた。
大いに困ったが、この言葉の方は、すでに慎重な会議をなんべんも開いて、採用に決定していたので、めるわけには行かない。
天災は忘れた頃来る (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
こんなことにかかりあっていてはよくないなと、薄うす自分は思いはじめた。しかし自分は執念深くやめなかった。またまらなかった。
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
どうにも仕方しかたがありませんでした。それでみな相談そうだんして、そのくせむまでしばらくのあいだ、王子を広いにわじこめることになりました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
夏期の降霜はまったくみました。今や小麦なり、砂糖大根なり、北欧産の穀類または野菜にして、成熟せざるものなきにいたりました。
閑子は急に明るい顔になり、子供たちの泣き声もそれでんだ。だがそのままいてくれとはいわない。だから閑子は出かけねばならない。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
女子 銀の竪琴の音は、やみの中を荒れ狂っている、赤い焔のように鳴っている。……暗の中の血薔薇のように。(オーケストラの音む)
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし、その途上でも、まだすっかりは昔の病のけ切っていない悟浄は、依然として独り言の癖をめなかった。かれつぶやいた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その内に真裸体まっぱだかの赤ん坊が、糸の無い月琴を弾きめると、皆一時にピタリと踊りをめて、手に手に持っている道具を藍丸王に渡した。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
西人せいじんの永く北斎を崇拝してまざるは全くこれがためにして我邦人のうちややもすれば北斎を卑俗なりとなすものあるもまたこれがためなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やはらかさに滿たされた空氣くうきさらにぶくするやうに、はんはなはひら/\とまずうごきながらすゝのやうな花粉くわふんらしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『そんなことめ!』と女王樣ぢよわうさまさけんで、『眩暈めまひがする』それから薔薇ばら振向ふりむいて、『なにをお前方まへがた此處こゝでしてたのか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
お聞き済みがなければむを得ざれど、お聞届きゝとゞけ下さればかたじけない、清次殿どうして貴殿きでんは僕が助右衞門殿を殺したことを御存じでござるな
彼は、夫人の至上命令のため、むなく自動車に乗ったものの、内心の不安と苦痛と嫌悪けんおとは、その蒼白あおじろい顔にハッキリと現われていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
倐忽たちまちひとみこらせる貫一は、愛子のおもてを熟視してまざりしが、やがてそのまなこの中に浮びて、輝くと見ればうるほひて出づるものあり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今から考えると、いかにもそれらはばかげているように見えますけれども、しかし古い時代にはそれもむをなかったのでありましょう。
ロバート・ボイル (新字新仮名) / 石原純(著)
その声は私の机のある窓近くでもあるので、書きものゝ気を散らせるので、めてもらはうと私は靴を爪先つまさきにつきかけて、玄関先へ出てみた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
それが十一時半になるとぴたりとんで、午前一時まで二たび啼くのを待つてゐたが、到頭啼かずにしまつたといふのである。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
午後ごゝんだがれさうにもせずくもふようにしてぶ、せまたに益々ます/\せまくなつて、ぼく牢獄らうごくにでもすわつて
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
(ほとんど突然と音楽の声む。)や、音楽が止んだ。己の心を深く動かした音楽が、神と人との間の不思議をきかせるような音楽が止んだ。
で、私の話は、フィービ孃のいたオルガンの低音が、まだ靜かに餘韻を殘してゐる間にめるのが一番いゝやうに思はれる。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
裏の雑木林では、何かが燃え出しでもしたかのように、蝉がひねもすまなかった。樹脂のにおいさえ、開け放した窓から漂って来た。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)