日暮ひぐれ)” の例文
そのわすがたあぢかされて、ことくが——たび思出おもひだしては、歸途かへりがけに、つい、かされる。——いつもかへとき日暮ひぐれになる。
はりに、青柳あをやぎ女郎花をみなへし松風まつかぜ羽衣はごろも夕顏ゆふがほ日中ひなか日暮ひぐれほたるひかる。(太公望たいこうばう)はふうするごとくで、殺生道具せつしやうだうぐ阿彌陀あみだなり。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
村中へ知らせず日暮ひぐれて立出させし所に猿島さるしま河原迄いた火打ひうち道具を失念しつねん致したるを心付昌次郎はとり立戻たちもどる時私しは又たくにて心付子供等があと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
マア金貸かねかしでもしてるか、と想像さうざういたされますうち丁度ちやうど明治三年の十一月の十五日、霏々ちら/\日暮ひぐれから降出ふりだしてました雪が、追々おひ/\つもりまして
すると大いに驚いた顔をして「何しろ内へお入り下さい」といい、もう日暮ひぐれでもございましたから店の小厮こものに店を仕舞しまうように吩付いいつけて家へ入った。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かれには悲愴ひさうかんほかに、だ一しゆ心細こゝろぼそかんじが、こと日暮ひぐれよりかけて、しんみりとみておぼえた。これ麥酒ビールと、たばことが、しいのでつたとかれつひ心着こゝろづく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうすると、こんなに毎朝来て何も教えることが出来んでは気の毒だ、晩に来て呉れぬかと云う。ソレじゃ晩に参りましょうといって、今度は日暮ひぐれから出掛けて行く。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
まさしくひしを心頼こゝろだのみにるまじきこととはおもへども明日あす日暮ひぐれたずくるまばせるに、容躰ようたいこと/″\くかはりてなにへどもいや/\とてひとかほをばるをいと
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
仏天青フォー・テンチンは、一つには睡眠剤を呑みすぎたせいもあり、また一つには、日暮ひぐれに宿についた臨時の客であったせいもあり、彼は起きないままに、部屋の中に放置ほうちされていた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ある日の日暮ひぐれどき私たちはこの遊びをしていた。私に豆腐屋とうふや林太郎りんたろう織布しょくふ工場のツル——の三人だった。私たちは三人同い年だった。秋葉あきばさんの常夜燈じょうやとうの下でしていた。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
すると二人が一の橋のたもとを左へ切れて、お敏と新蔵とが日暮ひぐれに大きな眼の幻を見た、あの石河岸の前まで来た時、後から一台の車が来て、泰さんの傍を走り抜けましたが
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昨日きのふ日暮ひぐれらからけえつてたら爺樣ぢさまにはとり餌料ゑさえてやつてつからたら、こめぜていた食稻けしねほうしていてんぢやねえけ、それかららもそれつたんぢやをへねつちつたな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
寺わきの乏し穂麦を刈るひとは日暮ひぐれき来る雨間うれしみ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かれには悲愴ひそうかんほかに、まだ一しゅ心細こころぼそかんじが、こと日暮ひぐれよりかけて、しんみりとみておぼえた。これは麦酒ビールと、たばことが、しいのであったとかれつい心着こころづく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
見樣と思ふ中其浪人は日暮ひぐれなれば仕舞しまひて歸る樣子やうすなれどもむしの知らせしか文右衞門にちがひなしとこゝろへ夫よりあとつけ見屆みとゞけしに山崎町の乞丐頭がうむね長屋ながや這入はひりしかば其所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
賑かな往来は日暮ひぐれが近づくのに従って、一層人通りが多かった。のみならず、飾窓ショウウインドウの中にも、アスファルトの上にも、あるいはまた並木のこずえにも、至る所に春めいた空気が動いていた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
始終とほしごたごたしてらち御座ござりませぬといふ、めうことのとおもひしが掃除さうぢのすみて日暮ひぐれれがたに引移ひきうつきたりしは、合乘あひのりのほろかけぐるま姿すがたをつゝみて、ひらきたるもん眞直まつすぐりて玄關げんくわんにおろしければ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手傳てづでえつてゝも、はあ、日暮ひぐれつたら、あつかもつかして凝然ぢつとしちやらんねえんだ、そんで愚圖ぐづ/\つてんの面白おもしれえからいてたな、丁度ちやうどえゝ鹽梅あんべえおれ草履ざうりひにつてつかせてな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大「拙者は根岸の日暮ひぐれヶ岡おかる、あの芋坂いもざかを下りた処に」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぽつぽつと雀飛びる薄の穂日暮ひぐれまぢかに眺めてゐれば
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
掛しにより彼のそうおどろき私しをはなしてにげ出せしかば其旅人に災難さいなんすくはれ阿部川の宿までおくくれし時はじめて九助と申事をうけたまはり彼是かれこれ日暮ひぐれ方に相成りしまゝ一れいの心にて一夜を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あるくもつたふゆ日暮ひぐれである。わたくし横須賀發よこすかはつのぼり二とう客車きやくしやすみこしおろして、ぼんやり發車はつしやふえつてゐた。とうに電燈でんとうのついた客車きやくしやなかには、めづらしくわたくしほか一人ひとり乘客じようきやくはゐなかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日暮ひぐれはピカピカ、豆袴まめばかま
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)