)” の例文
嗚呼、かる有様では、最早永久に早慶試合の復活は絶望と見るの他はあるまい。嘆又嘆たんまたゝん!学生界の為に此様こん不埒千万ふらちせんばんな事はない。
何かと遠慮いたされまするかるもういでゆえ、ずいぶん躊躇もいたしましたけれども、いろいろとそちらの御様子などお聞きいたし
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
くては天候の恢復する迄御出発を見合せるより外に方法はない。竹本さんや渡辺さんと相談して殿下に渡辺さんが其事を申上げる。
「構はないとも、ねらはれてるのは聟だらう。その聟が此處に居るんだもの、平次がう附いてゐるほど確かなことはないぢやないか」
しかもそれは魂の冷やかさから来る感じでは決してないのだ。最も純粋な道徳の状態と言ふものはかる姿をしてゐるのではないか。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
それをもう一層芸術的に、もう一層大がかりに、実行することは出来ないのでありましょうか。人見廣介はく疑うのでありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
うなると、熊は大てい、自分の穴の中へ引つ込んで、飲まず、食はず、長いこと眠つて、来年の春が来るのを待つてゐるものです。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
具体的論理たるかぎり、しかいうことができる。しかしくいうのは、論理の根柢に神秘的直観的なものを考えるということではない。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
彼女常に曰く、偉大なる人物を見んがためには妾は、千里万里の路をも遠しとせずして行かん也と。意気の壮なる、実にくの如し。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
すでくの如しとせば、予等独自の眼光を以て万象を観んとする芸術の士の、梅花に好意を感ぜざるはかならずしも怪しむを要せざるべし。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
くてはこの第一問は遂に知ることが出来ないこととなり、第二の問題の方に懸かろうかと思っていたが、これを知った佐々記者は
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれどふ言ふのが温泉場をんせんばひと海水浴場かいすゐよくぢやうひと乃至ないし名所見物めいしよけんぶつにでも出掛でかけひと洒落しやれ口調くてうであるキザな言葉ことばたるをうしなはない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一八一四年当時の囚人がくも珍妙な制服を着せられ、一週二回ずつひげっていたとは! すっかり書きかえねばならなくなった。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
『ナニ、そんなことつても駄目だめだ』とねこひました、『自分達じぶんたちだつてみんうしてたつて狂人きちがひなんだ。わたし狂人きちがひ。おまへ狂人きちがひ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大「暫くお待ちを……此の身の出世ばかりでなく、く申す大藏もいさゝかお屋敷へ対して功がござる、それゆえいて願いますわけで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
くと知るや、下からはおういおういと呼んだ。上からも答えた。中にも権次は岩の出鼻ではなすがりつつ、谷に向って大きな声で叫んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
弱くおろかなる人で無いことはたしかに信ずると篠田さんは言うてでしたよ、——姉さん篠田さんは貴嬢をくまであつく信じて居なさいますよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
うも能くわからんですが。一体うやつて、毎日毎日いてゐるのに、かれるひとの表情が何時いつも変らずにゐるものでせうか」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私には暗い/\日ばかり続いて居ます。もう幾日経つたのか忘れて了ひました。此処にうして居ると堪らなく世の中が恋しくなります。
獄中の女より男に (新字旧仮名) / 原田皐月(著)
好しらば、人生は暗黒なる雲霧の中に埋却すべきものとせんか。何物とは知らず吾人の中に、くするを否むものあるに似たり。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
くの如きものが所謂いわゆる世俗の義務論である。この義務論は独り恋愛ばかりでなくその他の人間の関係にも種々なる影響を及ぼしてゐる。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
けれども、此の掠奪の行はれる、乱暴な方法を見れば、くの如き親密な合意と云ふのも例外的の事である事が十分に証拠だてられる。
嫁泥棒譚 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
「あゝ、細かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうもうどこまでも廊下ぢや仕方ないね。」
注文の多い料理店 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
写実はすべての天平仏の美の根源であって、その自然から汲み取ることの感謝とよろこびをくも正しく表現している時代は少い。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
いま苦勞くらうこひしがるこゝろづべし、かたちよくうまれたる不幸ふしやはせ不相應ふさうおうゑんにつながれていくらの苦勞くらうをさすることあはれさのまされども
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しか今更いまさらなんとかとか長文句ながもんく手紙てがみけないものだから、『承諾しようだくい』といた電報でんぱうやう葉書はがきしたんだ、さうだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
その後とて引つゞき一つ所に働き居り候はばくまで不如意にも陥らざりしものを、……(中略)当今は渡米以来一等の貧乏に候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
かつて同じ千葉県下に起つた事実でういふのがあつた。将門ほど強い男でも何でも無いが、可なりの田邑でんいふを有してゐる片孤へんこがあつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
即ち、かの政治社会は潔清けっせい無垢むくにして、一点の汚痕おこんとどめざるものというべし。くありてこそ一国の政治社会とも名づくべけれ。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
くて三十四歳の時は、押しも押されもせぬ一廉ひとかどの禅師になり、亡師のあとを継いで松蔭寺の住職となり、まだ破れ寺ではあるが
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
なんと、飴屋あめやさんの上手じやうずふえくこと。飴屋あめやさんはぼうさききつけたあめとうさんにもつてれまして、それからひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ぢゃによって、おゆるしなされ、はやなびいたをば浮氣うはきゆゑとおもうてくださるな、よるやみ油斷ゆだんして、つい下心したごゝろられたゝめぢゃ。
さうしてはまたまばらな垣根かきねながみじかいによつてとほくのはやしこずゑえた山々やま/\いたゞきでゝる。さわやかなあきくしてからりと展開てんかいした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蘭を採つたり、つくばねの実を採つたり、山毛欅茸を採つたり、路草くふことも多かりしかば、く五時間も長くかゝりたる也。
秋の筑波山 (新字新仮名) / 大町桂月(著)
わたし児心こどもごゝろにも、アレ先生せんせいいやかほをしたなトおもつてつたのは、まだモすこ種々いろんなことをいひあつてからそれからあとことで。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
手持てもち品物しなものならばなるたけはやこれさばかう、また手持てもち品物しなものなるたけすくなくしよう、ふことは當然たうぜん結果けつくわはなくてはならぬ。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
おそろしい都、悲しい都、早熟な人間の居る南洋の何やらじまの子も五つ六つでうなのであらうかと、私は青ざめて立つて居ました。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
余は又目科がく詮さくする間に室中を其方此方そちこちと見廻して先に判事の書記が寄りたる卓子てえぶるの下にて見し彼のコロップの栓を拾い上げたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
また女が出て來て、う言つてすゝめたけれど、二人とも此のへやを動きたくはなかつた。女が去つてから、小池は莞爾々々にこ/\として
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
本國ほんごく日本につぽん立去たちさつたひと其人そのひといまかる孤島はなれじまうへにて會合くわいごうするとは、意外いぐわいも、意外いぐわいも、わたくし暫時しばし五里霧中ごりむちう彷徨はうくわうしたのである。
くして事件勃発以後に於ける二人の博士の最初の会見は、この大欠伸によって皮切られたのでありますが、続いて始まる二人の会話が
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼女は恐らく僕のみにそうするのではあるまい。かる不親切な車掌は大に膺懲ようちょうせざるべからずと、例に依って公憤を発した。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
と、彼は軽くき入つた、フラ/\となつた、しまつた! う思つた時には、もうそれが彼の咽喉のどまで押し寄せてゐた——。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
夫人のうして居られるのは自身の姿が不朽の芸術品として良人をつとに作られたその喜びを何時いつ迄もあらはして居られる様にも思はれるのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
送るさま側眼わきめで見てさへ不便ふびんなるに子の可愛かあいさの一筋に小半年ほどすごせしが妻のお久が病中より更に家業も成ぬ上死後しご物入ものいり何ややに家財雜具を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うしてほとん毎日まいにちごとつてうちに、萱原かやはらを三げんはゞで十けんばかり、みなみからきたまで掘進ほりすゝんで、はたはうまで突拔つきぬけてしまつた。
私はくのごとき渺漠とした満洲の風光を愛してかないが、そのうち満洲帝国が興つたので、二たび満洲の雷鳴を聞きたいとおもつてゐる。
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
俗界ぞくかいける小説せうせつ勢力せいりよくくのごとだいなればしたがつ小説家せうせつかすなはいま所謂いはゆる文学者ぶんがくしやのチヤホヤせらるゝは人気じんき役者やくしやものかづならず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
機関手は直に機関車をめたるに飛込み遅れたる同行の青年はくと見るや直に同校の土堤にかかざま短刀にて咽喉部を突きて打倒れたり。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
返忠かへりちゆうの者といはれん事口惜しく候、又申さぬ時は、重恩をかうむり候主君へ弓を引くべし、此旨を存じ、我名を隠してくの如し
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)