坂道さかみち)” の例文
のきいた運転士うんてんしくるまをつけたところが、はたしてそれであつた、かれ門前もんぜんくるまをおりて、右側みぎがわ坂道さかみち爪先上つまさきあがりにのぼつてつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
炭焼すみやきじいさんの、まご秀吉ひできちは、よく祖父そふ手助てだすけをして、やまからたわらはこぶために、村端むらはずれ坂道さかみちのぼったり、くだったりしました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて二人は石ころや木株のある険しい坂道さかみちにかかりましたので、おかあさんは子どもを抱きましたが、なかなか重い事でした。
それには遠方えんぽうよりつち次第しだいにつんで傾斜けいしやした坂道さかみちきづげ、それへいしげてこれをたておとて、それからそのうへ横石よこいしせたもので
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
はしうへに立つて、欄干らんかんからしたを見おろしてゐたものが二人ふたりあつた。金剛寺ざかでは誰にも逢はなかつた。岩崎家の高い石垣が左右から細い坂道さかみちふさいでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
思切おもひきつて坂道さかみちつてかゝつた、侠気をとこぎがあつたのではござらぬ、血気けつきはやつたではもとよりない、いままをしたやうではずつとさとつたやうぢやが、いやなか/\の憶病者おくびやうもの
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たかやまうへでおまけに坂道さかみちおほところですから荷物にもつはこのとほうまはこびました。どうかすると五ひきも六ぴき荷物にもつをつけたうまつゞいてとうさんのおうちまへとほることもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
といいながら、われわすれてけわしい坂道さかみち夢中むちゅうりて、白鳥はくちょうみずうみほうりて行きました。やっとみずうみのそばまでましたが、もう白鳥はくちょうはどこへ行ったか姿すがたえませんでした。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
勿論もちろんかゝる構造かうざうで、きわめて重量じゆうりようのある鐵車てつしやことだから、速力そくりよくてんおいてはあま迅速じんそくにはかぬ、平野へいやならば、一時間いちじかん平均へいきんマイル以上いじやう進行しんかうすること出來できるであらうが、勾配かうばいはげしい坂道さかみちでは
それからしたはうへかけて、カリフォルニヤがい坂道さかみちを、断間たえまなく鋼索鉄道ケーブルカー往来わうらいするのがえる。地震ぢしんときけたのが彼処あすこ近頃ちかごろてかけた市庁しちやうあれと、甲板かんぱんうへ評定ひやうぢやうとり/″\すこぶやかましい。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
ちょうど牛込見付うしごめみつけ飯田橋いいだばしとのあいだを、北へ登って行くほそい坂道さかみちがそれで、馬はいくらも使える江戸のような土地でも、やはり人の背を借りたほうが、べんりな場合がいくらもあったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いい音楽おんがくこえてくる坂道さかみちを、あかぼうをのせてのぼると、そこにはさくら幾本いくほんもあって、みごとにはないていました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
高野聖かうやひじりのことについて、あへべつちうしてをしへあたへはしなかつたが、翌朝よくてうたもとわかつて、雪中せつちう山越やまごしにかゝるのを、名残なごりしく見送みおくると、ちら/\とゆきるなかを次第しだいたか坂道さかみちのぼひじり姿すがた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
坂道さかみち土砂どしやはそののぞつたものと想像そう/″\されるのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ひでりつづきのあとなので、坂道さかみちのぼると、つちのいきれがかおをあおって、むせかえるようにかんじました。一めんしろかわいて、あるくとほこりがのぼりました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
坂道さかみち得堪えたへぬらしい、なよ/\とした風情ふぜいである。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしは、母親ははおやが、まちほうあるいていくうし姿すがたたので、みんなからわかれてんでいきました。母親ははおやのたもとにつかまって、はしわたり、坂道さかみちがって、お湯屋ゆやへまいりました。
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、今年ことしもその時分じぶんになったのです。五月雨時分さみだれじぶん坂道さかみちは、じめじめとして、やぶの草木くさきは、青々あおあおとしげりました。おかあさんのかえるも去年きょねんのように、みちうえていました。
お母さんのひきがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういって、彼女かのじょは、坂道さかみちりるようにして、いそぎました。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)