)” の例文
と母親は少しやな顔をした。お父さんに内証で独息子を悉皆すっかり馬鹿にしてしまう。男親が厳し過ぎると思ってかばう気があるからいけない。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『人のことを、そないに見るのはや。』と、お光は自身の身形みなりを見𢌞はしてゐる小池の視線をまぶしさうにして、身體からだすくめた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それは『自由詩の原理』と題する部分的の詩論であったが、或る事情から出版がやになって、そのまま手許てもとに残しておいた。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
けれどもそれほど不倫の行為とむ人たちが、男女相殺そうさいの恋愛の苦悩を述べ、歎き訴えるものには、同情を寄せるのはどうしたものだろう。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
で、實際にあたつては、彼が私に話し聞かせたやうに職業としてのつらさ、やさを同時に味ははなければならないのである。
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
このあいだ、一同はけがれみ、口をきよめ、念誦ねんず一心、一歩も忠義堂を出ることはない。そこに寄りつどったきりなのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでも性来、徒党をくむことを甚しくみ嫌ったために、博徒ギャングの群にも共産党にも身を投ずることがなかった。
恩ある人は二年目に亡せて今のあるじ内儀様かみさまも息子の半次も気に喰はぬ者のみなれど、此処を死場と定めたるなればやとて更に何方いづかたに行くべき
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
足を近しくまいりますが音羽は誠にやで、何うも虫が好きません、そばへ来られてもっと致しまするから振ります。
やン。いやだわ。初めて来たお部屋に、一人になるの嫌い。ここにいて、ねえ! お茶なんか飲みたくないわよ。お婆さんじゃないんだもの……」
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
へどをいたり下痢げりをしたりする不風流な往生わうじやうやである。シヨウペンハウエルがコレラをこはがつて、逃げて歩いたことを読んだ時は、甚だ彼に同情した。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いとものうくて、日ごろ親しき友にふみかんもや、行田へ行かんもいとふにはあらねどまたものうく、かくて絵もかけず詩も出でず、この十日は一人過ぎぬ。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そして自分の好きな女と一緒になりたいのだ。このやな女と好きな女と、いずれに決するかという問題になった時、やな女を遠去とおざけて、好きな女を貰ってしまった。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
べりべりッというやな音がして、学士の洋服が引裂けると、右腕が急に自由になった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
Prosperプロスペル Mériméeメリメヱ と云ふ文學者は決して人道其のものをみ輕んずるのではないが、然し自分だけは苦しみ惱む人から隔離して居られるやうに富裕でありたいと云つたし
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
紅梅の京を離れて住むは
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「女が何うしたんですよ。真正ほんとうやな子ね。お祖父さんが、この子は男だから豪いなんて仰有るものだから、好い気になっているんだわ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「處が、先生は何時もやさうな顏をしてお教へになります。そして先生のお教へになることはちつとも身にみません。」
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
なにたのしみに轅棒かぢぼうをにぎつて、なにのぞみに牛馬うしうま眞似まねをする、ぜにもらへたらうれしいか、さけまれたら愉快ゆくわいなか、かんがへればなに悉皆しつかいやで
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
およそ、人間が住み、人間が営む世間に、伯耆どのがみ嫌う人間のしゅうなるものが、まったく、ここにはないなどという別天地があるわけはない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卓一はその陰惨な獣臭をみ、蛇に似た執念深さを憎むのだつた。然し木村重吉は執拗にその親しみを寄せつづけた。
それが汽動車でゝもあつたらやなことだと、小池は切符を車掌に渡し、プラツトフオームから、線路を越えて、其處そこに見える街道の方へ歩いた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
彼女の心に浮んだものは、いつものような退屈な部屋ではなく、それよりももっと悪い、やな陰鬱なものが隠れている、不快な気味のわるい部屋であった。
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
貴方あなたどうぞおめなすって、そうして貴方の指環をわたくしにくださいまし、あなたし嵌めるのがおやならしまって置いてくださいまし、私は何も知りませんが
苦しい破目はめもあるというのは、一人の六十あまりになるおばアさんの人があって、このおばアさんの考えでは自分の身内の或る人を嫁に入れようとする。が銀行員の婿さんはその女はやなのだ。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
われ遺書をみ墳墓をにくむ。
ですが、さう申すからには、つらい、やな仕事だと思ふ一方に、やつぱりこの仕事を捨ててしまふ事の出來ないやうな、ちよつとふにはれない。
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
己れはお前が居なくなつたら少しも面白い事は無くなつてしまふのだからそんなやな戯言じようだんしにしておくれ、ゑゑつまらない事を言ふ人だとかしらをふるに
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『いや、あれはやだ。日が暮れるまで待つても汽車に乘らう。』と、小池は横の方の茶店へ入つて行つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「でも辛抱が足らないわ。二月ふたつき三月みつきで直ぐやになったんじゃ何処へ行っても出世は出来ませんよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼の側に坐ることをむ大名もあるし、大廊下ですれちがって、たもとの触れぬようにして人は歩いた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほかに出来る目途あてもないけれども、仲の町の井桁伊勢屋いげたいせやから来るお侍の、青髭あおひげの生えた色の白いせいの高いお客は、来て/\来抜くが、わちきはやーでなりまへんから
船員たちが二人の女を見る時には、すでに優しさを失い、最もまわしい物を見るような憎みきった目附きになり易いのは、愛慾が野獣のものになりかけている証拠であった。
何分なんぷんつた。突然とつぜん一人ひとり兵士へいしわたしからだひだりからたふれかかつた。わたしははつとしてひらいた。その瞬間しゆんかんわたしひだりほほなにかにやとほどげられた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それではおまへ加减かげんでもるいか、まあうしたとわけ此處こゝまでいてやにつたではむまいがねとこゑちかられて車夫しやふしかれば、御免ごめんなさいまし
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と孫右衞門の妻が是から次の間へ連れて行って種々いろ/\娘に迫るから義理にもやとは言われません。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かきみだした最もむべき時代には、半面にまた、楠氏一族のような、また諸国の尊王武族のような、真の日本武士やまともののふがあらわれたが——今は——今の武門は——また武士道は?
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなことを仰有おっしゃって、芳夫さん、あなたはもうやになったんじゃなくて?」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私の女はいたわりの心の深い女であるから、よるべないアキの長々の滞在にも表面にさしたる不快もやがらせも見せなかった。然し、その復讐は執拗しつようだった。アキの面前で私に特別たわむれた。
いずこへ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「おい小泉こいづみやにすぢやないか‥‥」と、わたし右隣みぎどなりあるいてゐる、これも一ねん志願兵しぐわんへい河野かうのささやいた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そのかはしはことも二とはさがらねど、よきことには大旦那おほだんなあまはうゆゑ、すこしのほまちはことるまじ、やにつたらわたしとこまで端書はがきまい、こまかきことらず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やなら仕方がありませんが、嬢様なんとかおっしゃいな、何故なぜ此方こっちへお尻を向けていらっしゃいます、うちでばかりう云おう、あゝ云おうと仰しゃって本当に影弁慶かげべんけいですよ
この日、十日はみ日(悪日)なればとて、洛中攻めは翌日にのばす——
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一字書き、一行進めては氣に入らなくなり、不滿になり、やになつたりして、私は幾度か原稿紙を引き裂き、幾度か書き出しの稿を改めずにはゐられなかつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その代りしはき事も二とはさがらねど、よき事には大旦那おほだんなが甘いはうゆゑ、少しのほまちは無き事も有るまじ、やに成つたら私のとこまで端書はがき一枚、こまかき事は入らず
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
い「誠に申しにくいけれども、どうか御膳ごぜんだけ召上ってください、しおやならばお母様っかさまはお加減が悪くていらっしゃるから、おさかなけて置いて、あのお見舞に上げたいものだねえ」
我が事として我慢のなるべきや、それよりは美登利といふ名を聞くごとに恐ろしく、又あの事を言ひ出すかと胸の中もやくやして、何とも言はれぬやな気持なり
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
從つてあんまり露骨に奇々怪々だつたり、ふんだんに血潮やピストルが飛び出したり、やに眼まぐるしく探偵や犯人の隱現出沒する探偵小説はほんとの面白味には乏しい。
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
何うも死んだ父様のお位牌いへいへ対して済みやしねえから、おえいにわしが気に入らねえで夫婦に成って居るのがやならば厭やで構いやせんから、家内うちわは切れても表向だけは夫婦と言わなければ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
白粉おしろいべつたりとつけてくちびる人喰ひとくいぬごとく、かくてはべにやらしきものなり、おりきばれたるは中肉ちうにく背恰好せいかつかうすらりつとしてあらがみ大嶋田おほしまだしんわらのさわやかさ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)