住吉すみよし)” の例文
きさきが一人自分から生まれるということに明石のしらせが符合することから、住吉すみよしの神の庇護ひごによってあの人も后の母になる運命から
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
むかし、摂津国せっつのくに難波なにわというところに、夫婦ふうふものんでおりました。子供こども一人ひとりいものですから、住吉すみよし明神みょうじんさまに、おまいりをしては
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
昔は金峯山きんぷせん蔵王ざおうをはじめ、熊野くまの権現ごんげん住吉すみよし明神みょうじんなども道明阿闍梨どうみょうあざりの読経を聴きに法輪寺ほうりんじの庭へ集まったそうである。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
住吉すみよし移奉うつしまつ佃島つくだじまも岸の姫松のすくなきに反橋そりばしのたゆみをかしからず宰府さいふあがたてまつる名のみにして染川そめかわの色に合羽かっぱほしわたし思河おもいかわのよるべにあくたうずむ。
溜息ためいきをついたりして、変だと思った事もあったのですが、大阪へいっても死ぬ日に、たった一人で住吉すみよしへお参詣まいりに行くといって、それをめたり
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
彼等は皆金さえあれば何処も住吉すみよしとばかりに巣を郊外に食っていて、夜の明けるのを合図に、ぼろいことを探しにワイ/\押し合って市内へ繰り込む。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あがった所は住吉すみよし村、森囲いでべんがらぬりの豪家、三次すなわちあるじらしいが、何の稼業か分らない。湯殿から出て、空腹すきばらを満たして、話していると夜が明けた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
住吉すみよし、箱崎、香椎かしい宗像むねかたを伏し拝み、天皇の都へ帰られる日一日も早からんことを祈り、垂水山たるみやま鶉浜うずらはまなどの険路、難所を越えた。何れも慣れぬ足での強行である。
お玉はそれを、町の方へ向けてなるべく明るいようにして、仔細に見ると、梨子地なしじ住吉すみよしの浜を蒔絵まきえにした四重の印籠に、おきなを出した象牙ぞうげ根付ねつけでありましたから
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
芝居は何日なんかあいだあるが、藩士たるものは決して立寄ることは相成あいならぬ、住吉すみよしやしろの石垣より以外に行くことならぬと云うその布令の文面は、はなはだ厳重なようにあるが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
阪神電車の沿線にある町々、西宮にしのみや蘆屋あしや魚崎うおざき住吉すみよしあたりでは、地元じもとの浜でれる鰺やいわしを、「鰺の取れ/\」「鰯の取れ/\」と呼びながら大概毎日売りに来る。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
二人は手を引き合つて住吉すみよし神社の宿院しゆくゐんのお旅所たびしよの隣にある大燈籠の所へ行きました。石段が五六段あつて、二つの燈籠の並んだ廻りの石も二尺位の幅のあるものなのです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
朝家の法制にもかつて天神地祇ちぎを分たれたが、のちの宗像むなかた賀茂かも・八幡・熊野・春日かすが住吉すみよし諏訪すわ白山はくさん鹿島かしま香取かとりのごとく、有効なる組織をもって神人を諸国に派し
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
和泉いずみ町、高砂たかさご町、住吉すみよし町、難波なんば町、江戸町の五カ町内二丁四方がその一郭で、ご存じの見返り柳がその大門通りに、きぬぎぬの別れを惜しみ顔で枝葉をたれていたところから
「だって、住吉すみよし、天王寺も見ないさきから、大阪へ着いて早々、あのおんなは? でもあるまいと思う。それじゃ慌て過ぎて、振袖にけつまずいて転ぶようだから、痩我慢やせがまん黙然だんまりでいたんだ。」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怖ろしく声のい人で、お経をむと、その調子が自然に律呂りつりよかなつて、まるで音楽でも聴くやうな気持がするので、道命が法華ほつけを誦むとなると、大峰おほみねから、熊野から、住吉すみよしから
住吉すみよしをどりに角兵衛獅子かくべいじし、おもひおもひの扮粧いでたちして、縮緬透綾ちりめんすきやの伊達もあれば、薩摩さつまがすりの洗ひ着に黒襦子くろじゆす幅狭帯はばせまおび、よき女もあり男もあり、五人七人十人一組の大たむろもあれば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父が二十七八歳で筆者の生地福岡市住吉すみよしに住んでいた頃である。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
住吉すみよしの神、この付近の悪天候をおしずめください。真実垂跡すいじゃくの神でおいでになるのでしたら慈悲そのものであなたはいらっしゃるはずですから」
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それからこれは人間にんげんちからだけにはおよばない、神様かみさまのおちからをもおりしなければならないというので、頼光らいこう保昌ほうしょう男山おとこやま八幡宮はちまんぐうに、つな公時きんとき住吉すみよし明神みょうじん
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
阪神電車の沿線にある町々、西宮にしのみや蘆屋あしや魚崎うおざき住吉すみよしあたりでは、地元の浜でれる鰺やいわしを、「鰺の取れ取れ」「鰯の取れ取れ」と呼びながら大概毎日売りに来る。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
或ひは源氏の大将の昔の路を忍びつつ、須磨すまより明石あかしの浦づたひ、淡路あはぢ迫門せとを押しわたり、絵島が磯の月を見る、或ひは白浦しろうら吹上ふきあげ、和歌の浦、住吉すみよし難波なには高砂たかさご
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは全く格別の趣きである。これは即ち南宗なんしゅう北宗ほくしゅうより土佐とさ住吉すみよし四条しじょう円山まるやまの諸派にも顧みられずわずかに下品極まる町絵師が版下絵はんしたえの材料にしかなり得なかった特種とくしゅの景色である。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここへ来たり奈良ならへ行ったり、住吉すみよし方面へ碑の石をさがしに行ったり、建碑の起工から一切のことを奔走して、いまも工事の監督にあたっている水戸家の臣、佐々介三郎さっさすけさぶろうなのである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私だけは父が迷信を極端に排斥したものですから、狐や狸のばかし話は嘘であると信じて居るのですが、友達は一人残らず住吉すみよし参りをしたきつつあんの話を真実ほんたうのことと思つて居たやうです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
養子に貰ひけて城富とぞ名らせけるが城富じやうとみの十四歳の時に養父の城重病死びやうし致せし故養母やうぼを大切に孝養して相應さうおうくらしける是よりさき此城富十二歳の春より按摩あんまわざとして居たりしが或時住吉すみよし町を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
六町間の一角だけがことに堅気な竪筋なので、住吉すみよし町、和泉いずみ町、浪花なにわ町となると、よし町の方に属し、人形町系統に包含され、やわらいだ調子になって、向う側の角から変ってくるのが目にたっていた。
のうじゆつこれも藝人げいにんはのがれぬ、よか/\あめ輕業師かるわざし人形にんげうつかひ大神樂だいかぐら住吉すみよしをどりに角兵衞獅子かくべいじゝ、おもひおもひの扮粧いでたちして、縮緬ちりめん透綾すきや伊達だてもあれば、薩摩さつまがすりのあら黒繻子くろじゆす幅狹帶はゞせまおび
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
姫君が国の母の御位みくらいをお占めになった暁には住吉すみよしの神をはじめとして仏様への願果たしをなさるようにと申しておきます。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
それからあたらしいおわんのおふねに、あたらしいおはしのかいをえて、住吉すみよしはまから舟出ふなでをしました。おとうさんとおかあさんははまべまで見送みおくりにってくださいました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
蒔絵の模様は、こうを除いたほとんど全部に行きわたっていて、両側の「いそ」は住吉すみよし景色けしきであるらしく、片側に鳥居とりい反橋そりはしとが松林の中に配してあり、片側に高燈籠たかどうろう磯馴松そなれのまつと浜辺の波が描いてある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大祓祭おほはらひまつり摂津せつつ住吉すみよし神社の神事の一つであることは、云ふまでもありませんが、その神輿みこし渡御とぎよさかひのお旅所たびしよへある八月一日の前日の、七月三十一日には、和泉いづみ鳳村おほとりむらにある大鳥おほとり神社の神輿の渡御が
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
住吉すみよし社家しゃけの息子さまは、この船にござらっしゃらぬか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
住吉すみよし町忠八店吉兵衞申上奉つり候私しむすめしまと申者三年以前より御旗本おんはたもと嘉川主税之助樣御屋敷へ腰元こしもと奉公に差出さしいだおき候處當人へ用事之あり昨年冬中より度々たび/\御屋敷へ罷出候へ共なに御取込おんとりこみの儀御座候由にて一向に御逢おんあはくださらず何共合點がてんゆかざる事と存じ居候中世間の風説ふうせつあしき儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夢の中でも父帝は住吉すみよしの神のことを仰せられたのであるから、疑うことは一つも残っていないと思って、源氏は明石へ居を移す決心をして、入道へ返辞を伝えさせた。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
みんなはあの三にんのおじいさんは、住吉すみよし明神みょうじんさまと、熊野くまの権現ごんげんさまと、男山おとこやま八幡はちまんさまがかり姿すがたをおあらわしになったものであることをはじめてって、不思議ふしぎおもいながら
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
住吉すみよし四所よとこのおん前には
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
入道は大事がって年に二度ずつ娘を住吉すみよしやしろ参詣さんけいさせて、神の恩恵を人知れず頼みにしていた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
住吉すみよしの姫君がまだ運命に恵まれていたころは言うまでもないが、あとにもなお尊敬されているはずの身分でありながら、今一歩で卑しい主計頭かずえのかみの妻にされてしまう所などを読んでは
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏は浪速なにわに船を着けて、そこではらいをした。住吉すみよしの神へも無事に帰洛きらくの日の来た報告をして、幾つかのがんを実行しようと思う意志のあることも使いに言わせた。自身は参詣さんけいしなかった。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
住吉すみよしの神への願果たしを思い立って参詣さんけいする女御は、以前に入道から送って来てあった箱をあけて、神へ約した条件を調べてみたが、それにはかなり大がかりなことを多く書き立ててあった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
いっさいが住吉すみよしの神の恩恵であると感謝されるのであった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
たれかまた心を知りて住吉すみよしの神代を経たる松にこと問ふ
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)