鶴唳かくれい)” の例文
これがために風声鶴唳かくれいその位置の危険なるに恐れ、ためにやむをえず武力を仮りて国を維持せざるべからざるの苦策を行なうことあり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
他人の常言も我耳に新しく、恐るべきを恐れず、よろこぶべきを悦ばず、風声鶴唳かくれいを聞きて走るの笑をとることあり。かくの如きはすなわち耳なきにかず。
風声鶴唳かくれいということはありますが、鶴が歌を唄うなどということはまだかつて聞いたことはありません。唄うというならば一体どういう風にして唄うのですか。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
風の音に、鶴唳かくれいに、おどかされおびやかされ、一生涯、滑稽な罪悪感と闘いつづけて行かなければなるまい。高野さちよは、美貌でなかった。けれども、男は、熱狂した。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
○漢語で風声鶴唳といふが鶴唳かくれいを知つて居るものは少い。鶴の鳴くのはしはがれたやうなはげしき声を出すから夜などはよほど遠くまで聞える。声聞于天こえてんにきこゆといふも理窟がないではない。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
風声鶴唳かくれい、風声鶴唳——。
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「奉別の時、官吏坐に満ち、言発すべからず。一拝して去る。今やすなわち地を隔つる三百里、つね鶴唳かくれい雁語がんごを聞き、俯仰ふぎょう徘徊はいかい自からあたわず」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)