鴻池こうのいけ)” の例文
芳川鎌子よしかわかまこを知る人は、それより一足前にあった、大坂鴻池こうのいけ夫人福子の哀れな心根に、女の一生というもののわびしさをも感じるであろう。
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「市長、私は小使にはようなりませぬ。鴻池こうのいけ善右衛門の親類の孫の娘の婿の従弟に当るものです。市役所の小使などにはようなりませぬ」
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
鴻池こうのいけとかいう素晴しい大物が旅をする時、わざと大がかりをいとい、なんでもない旅商人のようにカモフラージを試むることがあるとのこと
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの茶碗に附屬物一式揃つてゐたら、五百兩とか千兩とかいふ相場が付いて、大名の藏か三井鴻池こうのいけといつた大町人のところに納まるものでせう。
数多い故人の昵懇ちかづきのなかで、鴻池こうのいけH氏のみは、よく侯爵に対する手心を知つてゐて、滅多に疳癪玉をはじけさせなかつた。
「住友さんだの鴻池こうのいけさんだのと金持をさまづけにしてう有難そうに言うところを見ると、最早もう大分出来ているね?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今度の御用金は、鴻池こうのいけだけで、十万両やいうやないか。昔やと、十万両献金したら、倍にも、三倍にもなる仕事がもらえたけど、当節は、ただ召上げや。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
鴻池こうのいけをはじめ関西財界の巨頭連が強制的に株式をもたされて設立されたものであるが、二度目の長州征伐に負けたあととて、関西方面での幕府の信用失墜して
Moods cashey (新字新仮名) / 服部之総(著)
あの茶碗に付属物一式揃っていたら、五百両とか千両とかいう相場が付いて、大名の蔵か三井鴻池こうのいけといった大町人のところに納まるものでしょう。
では鴻池こうのいけさんのお嬢様だっしゃろ、と答えるくらいが落ちであるから、ここでそれを糾明きゅうめいするわけにはいかないが、ナンとその三井家のお嬢様に
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大阪で鴻池こうのいけ、炭屋、加島屋、平野屋、住友——京の下村、島田——出羽で本間、薩摩で港屋、周防すおうの磯部、伊勢の三井、小津、長谷川、名古屋の伊東、紀州の浜中、筑前の大賀
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昔、三井みついであったか、鴻池こうのいけであったかのお嬢様が、ある時、述懐して言うことには
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三十五万石の彦根へ行け、五十五万五千石の紀州へ行け、大阪へ出たら鴻池こうのいけ、住友——その他、この近国には江戸旗本の領地が多い、新米しんまいの胆吹出来星王国なんぞは見のがせ見のがせ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
次第によってはこんなのが、三井や鴻池こうのいけしの分限ぶげんにならないとも限らない、全く金で固まった面白くもない若造だけれども、こんなのをこっちのものにして置くのも不為めではない。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三井とか、鴻池こうのいけという大家が旅をする時に、よくこんなふうにやつして旅をするといったやつ——こいつは只物でねえ——と見破ったがんりきは、この点に於て、さすがに商売がらでありました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)