鮮血からくれない)” の例文
トもんどりを打って手足を一つに縮めた処は、滝を分けて、すとんと別の国へ出たおもむきがある、……そして、透通すきとおる胸の、暖かな、鮮血からくれないの美しさ。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あ、」と離すと、爪を袖口そでぐちすがりながら、胸毛むなげさかさ仰向あおむきかゝつた、鸚鵡の翼に、垂々たらたら鮮血からくれない
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しっかと持った、その脈を刺した手の橘の、鮮血からくれないに染まったのが、重く多一の膝に落ちた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
傾いたふなべりから、二にん半身を乗りいだして、うつむけに海をのぞくと思うと、くろがねかいなわらびの手、二条の柄がすっくと空、穂尖ほさきみじかに、一斉に三叉みつまたほこを構えた瞬間、畳およそ百余畳、海一面に鮮血からくれない
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
烏帽子の紐の乱れかかって、胸に千条ちすじ鮮血からくれない
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)