風声鶴唳ふうせいかくれい)” の例文
うらやましがる人も無いのに、そこは精神、吝嗇卑小になっているものだから、それこそ風声鶴唳ふうせいかくれいにも心を驚かし、外の足音にもいちいちきもを冷やして
禁酒の心 (新字新仮名) / 太宰治(著)
格之介の逃亡の理由が分かるにつれ、桑名藩士も官軍の人たちも、格之介が風声鶴唳ふうせいかくれいにおどろいて逃走を企て、捨てぬでもよい命を捨てたことを冷笑した。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
浪士らの勢いのさかんな時は二十里ずつの距離の外に屏息へいそくし、徐行逗留とうりゅうしてあえて近づこうともせず、いわゆる風声鶴唳ふうせいかくれいにもきもが身に添わなかったほどでありながら
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二者の間、既にかくごとし、風声鶴唳ふうせいかくれい、人あい驚かんと欲し、剣光火影かえい、世ようやまさに乱れんとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私が暗殺を心配したのは毎度の事で、あるい風声鶴唳ふうせいかくれいにも驚きました。丁度今の狂犬を見たようなもので、おとなしい犬でも気味が悪いとうようなけで、どうも人を見ると気味がわるい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ただちに私の身に害を及ぼしたでもなし、ただ無暗むやみに私が怖くおもったばかり、所謂いわゆる世間の風声鶴唳ふうせいかくれいに臆病心を起したのかも知れないが、維新後になってもいやな風聞は絶えず行われて、何分にも不安心のみか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)