風呂ぶろ)” の例文
もうしまいにはアトリエの隅に西洋風呂ぶろや、バス・マットを据えて、その周りを衝立ついたてで囲って、ずっと冬中洗ってやるようになったのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼の頭にはおそらくこの「夕飯ゆうめしのかますご」が膠着こうちゃくしていてそれから六句目の自分の当番になって「宵々よいよい」の「あつ風呂ぶろ」が出現した感がある。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あるいは東洋一と称せられる千人風呂ぶろを二人で独占して泳いだり、あるいは三大湯滝に打たれたり、あるいは軽便鉄道の見える部屋で玉突きに興じたり
メデューサの首 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「すぐどうかしなければならない。ロシア風呂ぶろがきくかも知れない。ならば一等上のたなにねたいものだ。」
元日にも聟入むこいりの時に仕立てた麻袴あさばかまを五十年このかた着用して礼廻れいまわりに歩き、夏にはふんどし一つの姿で浴衣ゆかたを大事そうに首に巻いて近所へもらい風呂ぶろに出かけ、初生はつなり茄子なす一つは二もん
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その間の訪客のひとりだった公卿くげが、牛車でここの役邸の門から帰ってゆくと、しばし客も絶えて、秀吉は夕風呂ぶろを出、丹波から来た養子の秀勝や前田玄以げんいなどを加えて、夕食をっていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
疲れきっている彼らにとっては、音楽はトルコ風呂ぶろであり、なま温かい湯気であり、マッサージであり、長煙管ぎせるです。思索の必要なんかはありません。それは戸外運動と恋愛との間の過渡期です。
こんな会話があってから、ちょうど幸い行水の季節になって来たので、私は再び、物置きの隅に捨ててあった西洋風呂ぶろをアトリエに運び、彼女の体を洗ってやるようになりました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)