露台バルコン)” の例文
旧字:露臺
かつてツーロンの市庁の露台バルコンが修繕さるる時、その露台をささえているピュゼーの有名な人像柱の一つがゆるんで倒れかかったことがあった。
そこからずっと向うへ長い廊下が延び、その端に大きな硝子扉ケースメント。その外は露台バルコンになっていて、そこに月の光があたっている。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
裏通りの四五軒目の、玄関とも、露台バルコンともつかないような入口の作りつけられている家の前で、ウォルコフは、ひらりと身がるく馬からおりた。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そして最後に建築物に関しても、松江はその窓と壁と露台バルコンとをより美しくながめしむべき大いなる天恵——ヴェネティアをしてヴェネティアたらしむる水を有している。
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なつかしい、然し何となく寂しいやるせない夏、夏は丁度白い服をきたヒステリーの看護婦の夕方の露台バルコンに出て吹き鳴らすはるもにかのやうに何時も私に新らしい哀傷のたねを蒔かしめる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
露台バルコン
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一同は思わず息を呑んで耳をすましていると、露台バルコン硝子扉ケースメントをソッと閉める音がし、何者かが廊下の絨毯を踏んでこちらの方へ近づいて来る。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
びんならぶ窻のそば、露台バルコンにダアリヤの花ただひとつ赤けれども
浅草哀歌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
料理屋の軒のともらぬ角燈に、露台バルコンの青くさき芥子のにほひに
浅草哀歌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日はむか河岸がし家畜病院かちくびやうゐんすたれたる露台バルコンを染め
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
暮れてゆく、ほの白き露台バルコンのなつかしきかな。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)