霊芝れいし)” の例文
定紋つきの塗長持の上に据えたはかまの雛のわきなる柱に、矢をさしたうつぼと、細長い瓢箪ひょうたんと、霊芝れいしのようなものと一所に掛けてあった、——さ、これが変だ。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これが若い時は閨秀けいしゅう詩人で鳴らした紅蘭こうらん女史であった。紅蘭が無月の洒落しゃれをいっても、奥で、笑いもせずにいる霊芝れいしみたいな人間は、むろん慷慨こうがい詩家、梁川星巌やながわせいがんなのである。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠く望めば霊芝れいしの如く、車蓋しゃがいの如く、庭へ出てみると、その高い枝ぶりは気持がいいのですが、この室内では盤崛ばんくつしている太い幹と根元を見るだけで、枝葉は見えないのです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
或る時庭の片隅の梅の切株に、霊芝れいしが五本生え、月を経てその菌は笠をひろげた。霊芝というものは支那あたりに珍重するばかりでなく、床の置物にするくらい稀有の目出度いものである。
庭をつくる人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)