雜魚ざこ)” の例文
新字:雑魚
ながらくひでりつゞいたので、ぬまみづれさうになつてきました。雜魚ざこどもは心配しんぱいしてやま神樣かみさまに、あめのふるまでの斷食だんじきをちかつて、熱心ねつしんいのりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
その代り、時には飛んでもない者と、すつかり眤懇ぢつこんになつてゐることがあります。巾着切たつ三などもその一人で、相手は御法の網の目をくゞる、雜魚ざこのやうな男。
が、今は入江の魚が減つて、岩のあたりで釣魚をしたつて、雜魚ざこ一匹針にはかゝつて來ないらしい。山や海の景色もあの時分は今よりも餘程よつぽど美しかつたやうに思はれる。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
うしろからねぢ伏せるやうな勢ひでなくちや。……いろんな野郎が通るだらう。みんな雜魚ざこ野郎なんだから、こつちもそのつもりで、この馬鹿野郎と呶鳴るつもりで呼びアいゝんだよ。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
兄のたけしはそれほど仕入れには熱心であつて、大物よりも、雜魚ざこの刻み値が刻んだ利益のあることを知つてゐて、おやぢの代りに仕入れに行くくらゐであるから、氣に入つてゐるのである。
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
伯次さんは諏訪樣の裏の寮に、晝過ぎまで居りましたが、こんな時は雜魚ざこを相手の方が宜いとか何んとか浮世離れのしたことを言つて、瓢箪をブラさげて、釣竿を
ぬまてしまはないうちにあめはふりましたが、そのあめのふらないうちに雜魚ざこはみんな餓死がししました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「藤三郎やお仙は雜魚ざこだ、この裏にはもつと凄いのが居る」
雜魚ざこいの
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「今騷いぢや何にもなりません。あの女は雜魚ざこだが、そとに居るのが大物です——。それもあと一刻の命でせう——、今頃は捕方同心の手の者が百人ばかり、もう八丁堀から繰り出した頃——もう袋の中の鼠も同樣——」