雑司ヶ谷ぞうしがや)” の例文
雑司ヶ谷ぞうしがやにあるだれだか分らない人の墓、——これも私の記憶に時々動いた。私はそれが先生と深い縁故のある墓だという事を知っていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伊右衛門はますます恐れて雑司ヶ谷ぞうしがや鬼子母神きしもじんなどへ参詣さんけいしたが、怪異はどうしても鎮まらないで女房が病気になったところへ、四月八日
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うしても姐御に逢わずに居られないから、ここ十日の間に、折を見て、雑司ヶ谷ぞうしがや鬼子母神きしもじん様へお詣りをして貰い度い。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
今、この悲しい詩人のれいは、雑司ヶ谷ぞうしがやの草深い墓地の中に、一片の骨となって埋まっている。
その後わたしは目白に一旦立ち退いて、雑司ヶ谷ぞうしがや鬼子母神きしもじん附近の湯屋にゆくことになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『アハハハ、何だか知らないが、兎に角われも/\といったような感じでぞろ/\出て来るよ。牛込の人達ばかりでなく、近くの麹町こうじまち辺からも、又遠く小石川や雑司ヶ谷ぞうしがやあたりからもね。』
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
□小石川雑司ヶ谷ぞうしがや町百、天弦堂から近代思想叢書が刊行される。
私はその人から鄭寧ていねいに先生の出先を教えられた。先生は例月その日になると雑司ヶ谷ぞうしがやの墓地にあるる仏へ花を手向たむけに行く習慣なのだそうである。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雑司ヶ谷ぞうしがやの民谷伊右衛門の家では、伊右衛門が内職の提燈を貼りながら按摩の宅悦と話していた。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
国元からKの父と兄が出て来た時、私はKの遺骨をどこへめるかについて自分の意見を述べました。私は彼の生前に雑司ヶ谷ぞうしがや近辺をよくいっしょに散歩した事があります。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)