隠忍いんにん)” の例文
「その弁解をいたしますと、自然大蔵どのの秘密を喋舌しゃべってしまうことになりますから、何といわれても、今は隠忍いんにんしておりまする」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大抵の場合には隠忍いんにんしている彼女も、京子の露骨な結婚強請には堪えられなかった。彼女は、もう村川のことは思い切っていた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
だが、の男を殺してしまったお蔭で、隠忍いんにん十年、殺人癖さつじんへきから遠去かっていたのわしの身体には、久しく眠っていた悪血あくけつが、一時にえに目覚めて、きあがってきたようだ。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
由来、懐柔かいじゅう、外交、隠忍いんにんなどは彼のしょうに合ったものではない。だから一面では、相変らず烈しい猛断と攻撃は敵にそそがれつつあった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というような隠忍いんにん主義は、清十郎なればこそいえるのであって、古参たちは、胸に思っても、口に出せないことだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべて外交の計は苦節です隠忍いんにんです。玄徳に出世を与える。勿論、お嫌でたまらないでしょうが、その効果は大きい。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が——隠忍いんにんに隠忍をかさねて、いまやようやく、根本からそのうれいを除くときが来た。いまこそと、彼はひそかに、手につばして、それへ取りかかったのである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われわれ側臣の隠忍いんにんにも限度がある。貴公がつねにさけぶ一剣掃奸いっけんそうかんを決行するときは来た。おそらく君もそのときを待っていたのだろう。又四郎、ともに死のう。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この一便こそ、秀吉が清洲会議以後の受身と隠忍いんにんの、休息期を離れて、初めて天下の棋盤きばんへぱしっと一石打って出た、消極から積極への一転を予告するものだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衆臣もみな光秀にその隠忍いんにんの道を選ばれたいとうので、光秀もようやくそれに方途をきめて、城の後事は守将の三宅藤兵衛にあずけ、自身は宵の頃すでに、そこを脱していたものであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ウム、もう隠忍いんにんしている場合ではない。若狭わかさ! 若狭守!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思うに玄徳も、機を計って、隠忍いんにんしておるに相違ない
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)