陰火おにび)” の例文
苦笑にがわらひをしてまた俯向うつむいた……フとくと、川風かはかぜ手尖てさきつめたいばかり、ぐつしよりらしたあたらしい、しろ手巾ハンケチに——闇夜やみだとはしむかうからは、近頃ちかごろきこえたさびしいところ卯辰山うたつやまふもととほる、陰火おにび
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
底に青ずみ漂う血の海。上にさまよう陰火おにびの焔は。罪も報いも無いまま死に行く。精神病者の無念の思いじゃ。聞いて聞こえぬ怨みの数々。聞いた心がクドキの文句じゃ。念仏代りの阿呆陀羅経あほだらきょうだよ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)