陥穽わな)” の例文
旧字:陷穽
『まあって云った処で、愚図々々ぐずぐずしていて陥穽わなに落ちちゃあつまらない。そろそろ退却するかな。さあ、金太郎君いらっしゃい』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
父親を陥穽わなおとしいれ、一家を離散させ、母親を自害させ、限りない苦悩のどん底に投げ入れたのだと思うと、雪之丞は、只、すぐに一刀に斬り殺したのでは
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
自分の才気と力量と美貌びぼうとに充分の自信を持つ葉子であったら、毛の末ほども自分を失う事なく、優婉ゆうえんに円滑に男を自分のかけた陥穽わなの中におとしいれて
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
僕は陥穽わなをにらんで四昼夜も頑張っていました。すると、五日目の昼になってとうとうやって来ました。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「いいえ、あたしは犯人じゃありません。このジュリアは貴方の電話でうまく此処ここさそいだされたのです。陥穽わなです、恐ろしい陥穽なんです。ああ、あたし……」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ヒラセウムとは、岩狸ハイラックスが尿所へする尿の水分が、蒸発した残りのねばねばした粘液で、カークはこのヒラセウムのある樹洞ほらのまえに、陥穽わなを仕掛けようとしたのであった。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
宿屋へ運んだように見せかけたのは警察をたぶらか陥穽わなであった。犯人はたしかにまだあの僧院の中に隠れている。死にそうになっている病人をそんなに運び出せるものではない。
葉子は陥穽わなにかかった無知なけものあわれみ笑うような微笑を口びるに浮かべながら
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ですから、御覧のとおりの開けっ放しで、勿論陥穽わな計謀たくらみもありっこないのです。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
どうして、破れ目がありそうだと、そこにはきまって陥穽わながあるんだから
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「ほほ、陥穽わなに落ちたのがそのゴリラでないとすると……ドドかね」
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)