防柵ぼうさく)” の例文
天からでも降ったように、次の日には、塹壕や防柵ぼうさくの陣地にある兵隊たちの手へ、時ならぬ牡丹餅ぼたもちが、幾ツずつか配給された。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木の階段に、何かが上ってでも来るような音がきしった。子供は飛び上がった。肱掛椅子と二つの椅子とテーブルとを、室のいちばん奥の隅に引きずっていって、それで防柵ぼうさくをこしらえた。
山口重政に、実情を聞き、その重大性におどろいて、井伊隊は徹夜で、海岸、川の海口などへ、防柵ぼうさくを設けた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国をあげて、外敵にそなえた日の防柵ぼうさくや石垣や乱杭らんぐい腐木ふぼくなどが、今も川床かわどこや草の根に見あたらなくはない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう蟹江川かにえがわ筏川いかだがわ鍋田川なべたがわ——そして木曾川きそがわ口へかけてまで、数里の海岸線は、防柵ぼうさくいまわし、塹壕ざんごうをほり、障碍物しょうがいぶつをおき、全隊、汗みどろに、働いている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他の工兵部隊は、鎮台の麓の要所要所に地雷を埋め、防柵ぼうさくを組みまわしていた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この沿岸は遠浅とおあさのため、満潮時を待たねば船を寄せられず、潮が満ちて来たと思ったときは、すでに海岸線一帯の防柵ぼうさくが、徳川北畠の旌旗せいきをひるがえし、守備ぬかりなく見えたからである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)