たがね)” の例文
彼はほとんど自由になって恐ろしい態度をし、すごい火光がしたたるばかりのまっかに焼けたたがねを、頭の上に振りかざしていたのである。
ねえ支倉君、じいっと耳を澄ましていると、なんだか茶立蟲のような、美しいたがねの音が聞えてくるようじゃないか。ときに、こういうヴェルレーヌの詩が……
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
清の名乗なのりは、勿論、恩師窪田清音すがねの一字。一刀一刀鍛つごとに、鉄へ切り込むたがねのごとく、その人を忘れまいとする彼の気持から選んだ名であることはいう迄もない。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
フォーシュルヴァンは震え上がって息もつけなかったが、それでも鋭利なたがね金槌かなづちとを取って、上の板をはねのけた。
私の仕事ですから、ポケットの中に金槌かなづちたがね釘抜くぎぬきとを入れて置きます。棺車が止まって、人夫どもがあなたの棺を繩でゆわえて、穴におろします。
同時に彼は腕を伸ばして、右手に木の柄をつかんで持っていた焼けてるたがねを、そのあらわな肉の上に押し当てた。
老人のポケットから、金槌かなづちの柄や鋭利なたがねの刃や釘抜くぎぬきの二つの角などがはみ出ていた。