鎚音つちおと)” の例文
丘一つむこうでは、鍛冶聚落かじむらの刀鍛冶たちが、戦国の招来を謳歌するように、鎚音つちおとこだまさせているし、ここでは、迷える民衆が
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麦稈帽むぎわらぼうの書生三人、ひさし髪の女学生二人、隣室となりまに遊びに来たが、次ぎの汽車で直ぐ帰って往った。石狩川の音が颯々さあさあと響く。川向うの山腹の停車場で、鎚音つちおと高く石を割って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
智深はぽかんとふもとの空を眺めやっていたが、そのうちにふと、トンカン、トンカン、鍛冶屋かじや鎚音つちおとが風にのって聞えてきた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鍛冶小屋のほうから時折、烈しい鎚音つちおとがひびいてくる。必死に、鉄砲の関金を作り直しているのだろう。天蔵の耳には、それがどんなに聞えて行くか。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外には鍛冶のふいごや鎚音つちおともしていた。床場ゆかばの内では、弓の弦師つるし、具足の修理、くさずりの縫工ほうこう研師とぎし塗師ぬし革裁かわたち、柄巻つかまき、あらゆる部門の職人が見える。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
カーン、カーン、と何処かで鍛冶かじ鎚音つちおとがたかく響くのも、寝覚ねざめの耳には、快かった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に、物置小屋の鍛刀所では、何かにつけて不便なので、清音の屋敷から遠くない、四谷北伊賀町に一軒借りうけ、そこで、彼が江戸に於ける第一声の鎚音つちおとを、初めて、揚げることとなった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこかでは、刀鍛冶の澄んだ鎚音つちおとがひびいている。行くほどに、「後藤助光」と木札を打った一軒の門もながめられた。さらに行くと、もっと軒ばを接しあった長屋の一聚落じゅらくが騒音とともにあった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山上にまで、テンカン、テンカン、こだましてきたのはここの鎚音つちおと鉄台かなしきの響きにちがいない。手を休めた三人の鍛冶工は、鼻の穴から目ヤニまですみにした真っ黒けな顔を揃えて、智深の姿を見まもった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
工廠こうしょう鎚音つちおとは水泊にえ、不死身の鉄軍も壊滅し去ること
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鎚音つちおとが少し高過ぎるな。ほりの外まで、聞えはせぬか」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)