鍼医はりい)” の例文
旧字:鍼醫
それでも最上の伊白という鍼医はりいの為に健康を危うくされて、老臣の村井豊後ぶんごの警告により心づいて之を遠ざけた、というはなしがある。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
隠宅というとふた間か三間の小さな家にきこえるが、法眼ほうげんといえば位は最上、ろくは百五十石、はぶりをきかした大奥仕えのお鍼医はりいの未亡人がこの世を忍ぶ住まいです。
近所の鍼医はりいさんを呼んで来て、いつものように針を打って貰いますと、まずいい塩梅あんばいにおちつきましたが、母の癖で、癪を起しますと小半日は起きられないのでございます。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
同志の中でも器用なものは、医者の真似まねをしたり鍼医はりいになったりして、それぞれ渡世の道を立てているが、吾々は仇討専門で、ほかに芸がないから日々喰い詰める一方である。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
新「困っても仕方がない、何か、さしこみには近辺の鍼医はりいを呼べ、鍼医を」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたくし鍼医はりいです。」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
此の者は越中国えっちゅうのくに射水郡いみずごおり高岡の町医の忰で、身持放埓ほうらつのため、親の勘当を受け、二十歳はたちの時江戸に来て、ある鍼医はりいの家の玄関番に住込み、少しばかり鍼術はりを覚えたので、下谷金杉村かなすぎむらに看板をかけ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いいえ、お鍼医はりいの吉田法眼ほうげんさまでござります」