錆色さびいろ)” の例文
庭には椿も大半錆色さびいろに腐って、初夏らしい日影が、かえでなどの若葉にそそいでいた。どこからか緩いよその時計の音が聞えて来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
姉は間もなく裏の山へ行こうといい出した。二人は山へ来るとこけの上へ足を投げ出して坐った。真下に湖が見えた。錆色さびいろの帆が一点水平線の上にじっとしていた。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ラジーン塗具ぬりぐ錆色さびいろ塗具ぬりぐ銅板どうばん鐵板てつぱん鋼板こうばん亞鉛塊あゑんくわい、ガツタバーカーばん、エボナイトばん硝子板せうしばん硝子管せうしくわん舷窓用げんそうよう厚硝子あつがらす螺旋鋲らせんべう鋼鉸鋲こうこうべう眞鍮鑄鋲しんちゆうじゆべう石絨衞帶せきじゆうえいたい彈心衞帶等だんしんえいたいとういたるまで
苦痛も熱も呼吸の数もすこしへったが脈搏みゃくはくが九十六にふえた。野菜スープは格別の印象も残らない。林檎りんごの汁は錆色さびいろに濁るのが難である。しかしその栄養価にふさわしい?コクのある複雑な味がする。
胆石 (新字新仮名) / 中勘助(著)
老婢が気を附けて、しなびぬやうにと井戸端の水桶の中に、私の燈籠は前夜もその前夜も入れられてあつたのですが、それにも関らず青白かつた彫跡ほりあと錆色さびいろを帯び、青い地は黒い色になつて居るのです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)