銭箱ぜにばこ)” の例文
旧字:錢箱
この途端にさっまぶたを赤うしたが、へッついの前を横ッちょに、かたかたと下駄の音で、亭主の膝を斜交はすっかいに、帳場の銭箱ぜにばこへがっちりと手を入れる。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その婆さんは銭箱ぜにばこから一銭銅貨を出してくれた。木之助は胡弓を鳴らすのをやめて、それを受け取りたもとへ入れた。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
主人しゅじん銭箱ぜにばこからつりせんをつまみだそうとすると、さっと銭箱の中のひとつかみの金貨が空中へいあがった。
そこで身を起して銭箱ぜにばこの中から毎日節約して貯め込んだ十三枚の小銀貨と百八十の銅貨をさらけ出し、皆ひっくるめて衣套かくしの中に押込み、戸締をして寶兒を抱えて何家かけの方へと一散に走った。
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)
食料品しょくりょうひんをうっているこじんまりした店では、きゃくにつりせんをわたすために主人しゅじん銭箱ぜにばこのふたをあけた。そのとたん、主人しゅじんはすぐ身近みぢかに人のけはいがせまるような感じをうけた。