鉄蹄てってい)” の例文
鉄蹄てっていの真赤になったのが鉄砧かなしきの上に置かれ、火花が夕闇を破って往来の中ほどまで飛んだ。話していた人々がどっと何事をか笑った。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
見よその先祖は赤手を揮うて四海を圧倒したるローマ人も、その子孫に至ればたちまち北狄ほくてき蛮人の鉄蹄てってい蹂躙じゅうりんせられたるにあらずや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
またある時は馬の鉄蹄てっていが石を蹴って、そこらにき散らす火花の光りが、あたかも火の路を作ったかと疑われました。
青年画家は麓を志して道をいそいだが、後方うしろの山を越えて、千軍万馬の襲い来る鉄蹄てっていの響きや、馬のいななきをきいた。たちまち雨やら、風の物音が耳許みみもとを襲う。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一触いっしょくしてタイタニックを沈めた氷山である。華麗かれいな羅馬の文明を鉄蹄てってい蹂躙じゅうりんした北狄ほくてき蛮人である。一切の作為さくい文明ぶんめいは、彼等の前に灰の如く消えて了う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一千年前ローマ帝国を鉄蹄てっていのもとに蹂躙じゅうりんしたるの戦争はチュートン人種・ラテン人種・ケルト人種・スラブ人種の戦争なり。今日の戦争はいかん。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)