鉄片てつきれ)” の例文
とうとうこらえきれなくなって、わたくしはいつしか切株きりかぶからはなれ、あたかも磁石じしゃくかれる鉄片てつきれのように、一良人おっとほうへとちかづいたのでございます……。
遥か向うを通る四五人の職工が、鉄片てつきれの堆積越しにこちらを見て、ゲラゲラと笑いながら事務室の中へ這入って行った。やはり芝居の稽古と思ったのであろう。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そんな訳で、最初から腹をめて仕事をしたお蔭で、ヤット船が動き出すには動き出したが、今度はモウ速力スピードを出さない。八千ポンドの証文をタタキ返して、安全弁セーフチイバルブ鉄片てつきれを引っこ抜いてしまった。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)