鉄火てっか)” の例文
旧字:鐵火
仁義も切れれば、鉄火てっかなタンカを切るのも身に付き、やくざ世界の若い姐御としての素質を備えたのに、今、それを捨て去る気はない。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
大きな眼を据え顔を傾けて、早口の伝法肌でんぽうはだ、膝をくずした姿も色めき、男を男と思わぬところ、例によって姐御一流の鉄火てっかな調子……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
日本にはない藻類もるいを採取研究のためにヨーロッパを歩いているうちに、鉄火てっかの雨にうたれてしまったものらしい。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かねびらのきれるのと、亀吉仕込みの鉄火てっかとが、姿に似合ぬしたたかものと、ねえさん株にまで舌を巻かした。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
吉原あたりで見る鉄火てっかのようなところもあって、年も二十を幾つか越したぐらいのところ、芸者としては、今を盛りの芸者ぶりで、立派に江戸芸者で通るほどの女でありましたから
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つまり博奕打の女房という鉄火てっかな自意識をさすのであり、そのためには、亭主の負けがこんでくると、片膝立ちになって赤いものをちらちらさせるという、特技を演ずることも辞さなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やみの影、低いながら、ピチピチとした鉄火てっかな口調で、れの男を叱るように、こういい放った女——では、これが、当時、江戸で、男なら闇太郎、女ならおはつと、並びうたわれている女賊なのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
鉄火てっかとはいえ、女の手だけでどうしてあの重囲じゅういを切り抜けて、ここにこうして、今つづみの与吉を、なかば色仕掛いろじかけで柔らかい捕虜とりこにしようとしているのであろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
つまり博奕打の女房にょうぼうという鉄火てっかな自意識をさすのであり、そのためには、亭主の負けがこんでくると、片膝かたひざ立ちになって赤いものをちらちらさせるという、特技を演ずることも辞さなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、彼女のやり方だけは、鉄火てっか粗暴そぼうなものであった。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
鉄火てっかな姐御の知らずのだけに、そっくり男に見えたに相違ない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
櫛まきお藤は白い顔を雨に預けて、鉄火てっかに笑った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)