金之助きんのすけ)” の例文
どうしたはずみからか、その袖子そでこ金之助きんのすけさんをおこらしてしまった。子供こども袖子そでこほうないで、おはつほうへばかりった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
兄の金之助きんのすけがめくばせをしながら云った。宇女はもういちど父の顔を見上げた。そして落着いた声で
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
宝田寿来、通称は金之助きんのすけ、一に閑雅かんがと号した。『作者たなおろし』という書に、宝田とはもと神田よりでたる名と書いてあるのを見れば、まことうじではなかったであろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この金之助きんのすけさんは正月生しょうがつうまれの二つでも、まだいくらもひと言葉ことばらない。つぼみのようなそのくちびるからは「うまうま」ぐらいしかれてない。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このとうさんは、金之助きんのすけさんを人形扱にんぎょうあつかいにする袖子そでこのことをわらえなかった。なぜかなら、そういう袖子そでこが、じつとうさんの人形娘にんぎょうむすめであったからで。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)