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金之助
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きんのすけ
どうしたはずみからか、その
日、
袖子は
金之助さんを
怒らしてしまった。
子供は
袖子の
方へ
来ないで、お
初の
方へばかり
行った。
宝田寿来、通称は
金之助、一に
閑雅と号した。『作者
店おろし』という書に、宝田とはもと神田より
出でたる名と書いてあるのを見れば、
真の
氏ではなかったであろう。
この
金之助さんは
正月生まれの二つでも、まだいくらも
人の
言葉を
知らない。
蕾のようなその
脣からは「うまうま」ぐらいしか
泄れて
来ない。
この
父さんは、
金之助さんを
人形扱いにする
袖子のことを
笑えなかった。なぜかなら、そういう
袖子が、
実は
父さんの
人形娘であったからで。