野良猫のらねこ)” の例文
夜ふかしは何、家業のようだから、その夜はやがて明くるまで、野良猫のらねこに注意した。彼奴きゃつ後足あとあしで立てば届く、低い枝に、あずかったからである。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「つまるところ表通りの教師のうちの野良猫のらねこ無暗むやみに誘い出したからだと、わたしは思うよ」「ええあの畜生ちきしょうが三毛のかたきでございますよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
獰惡だうあく野良猫のらねこ、おとなりのとり全滅ぜんめつさせたわるいヤツ、うちたひをさらつた盜癖とうへきのある畜生ちくせう、それがんだは、このやさしいうつくしいニヤンこうである。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
むしろそれが本職であつた。そして一度、私娼の逃亡を見つけたなら、野良猫のらねこを捕へたやうに、つて蹴つて縛り上げて、元の家へ引きずつて行くのが極りであつた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
「あんな主人を持っている猫だから、どうせ野良猫のらねこさ、今度来たら少したたいておやり」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)