邸第ていだい)” の例文
大坂城は、今なおさかんなる工事中である。城濠、外廓、諸侯の邸第ていだいなどには、相変らず数万の人夫と工匠が昼夜なく働いている。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下谷竹町はもと佐竹、藤堂、加藤、生駒四氏の邸第ていだい並に幕府諸士の宅地なりしを明治五年合併して新に町名を加う。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
水野忠精の邸第ていだいは武鑑に「かみ、三田二丁目、しも、青山長寿丸、同、本所菊川町、同青山窪町」と云つてある。今の志村氏の家は千駄谷村もと原宿町である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
親王は金冊金宝きんさつきんほうを授けられ、歳禄さいろく万石まんせき、府には官属を置き、護衛の甲士こうしすくなき者は三千人、多き者は一万九千人に至り、冕服べんぷく車旗しゃき邸第ていだいは、天子にくだること一等、公侯大臣も伏して而して拝謁す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
億兆を鳥飛ちょうひ獣奔じゅうほんせしめてはばからず、功成って少師しょうしと呼ばれて名いわれざるに及んで、しかも蓄髪を命ぜらるれどもがえんぜず、邸第ていだいを賜い、宮人きゅうじんを賜われども、辞して皆受けず、冠帯してちょうすれども
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)