遠道とおみち)” の例文
「そうらしいて。だが何里も遠道とおみちをかけて来た者に、まさかどらきでごめんをこうむるつもりではあるまい」
茶屋といふものなくなりて、劇場内の食堂の料理何となく気味わるき心地せられしがためのみ。雨の降るなぞとぼとぼと遠道とおみちを帰り行くことの苦しくなりしがためのみ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「ぼつちやん、どうでございます、爺いやあはうまうございませうえへゝゝ」といひ「もちつと採つて上げたうございますが、遠道とおみちを抱へて居りますから、これで御免を蒙ります」
「私も、——昨年ですが、塔婆を持って、遠道とおみちを乗った事があるんです。……」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠道とおみちをするときだとか、薬屋や医者へ行く時もそうだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
朝早く出掛でかけ間際まぎわに腹痛みいづることも度々たびたびにて、それ懐中の湯婆子ゆたんぽ懐炉かいろ温石おんじゃくよと立騒ぐほどに、大久保よりふだつじまでの遠道とおみちとかくに出勤の時間おくれがちとはなるなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)